写真はオンタケヤスデゴケ Frullania schensiana のようです。 剣山の標高1750m付近で2024年7月に採集されたもので、10月28日の顕微鏡観察会(注1)でSJさんが持って来られたものを少し分けていただきました。 写真は採集されてから1年以上経っていて少し変色していますが、本来の色は黄褐色~赤褐色のようです。
写真のコケは、平凡社に従えばホシオンタケヤスデゴケ F. schensiana var. punctata となるのですが、現在ではオンタケヤスデゴケの異名とされています(片桐・古木:2018、古木2020)。
(注1) 岡山コケの会関西支部(略称 オカモス関西)では、原則毎月第4火曜日に大阪市立自然史博物館の1室をお借りし、顕微鏡を使った蘚苔類の観察会(愛称 苔ミタロ)を実施しています。 どなたでも参加できます。
背片は卵形で全縁、円頭、腹片は帽状で、嘴の先は丸くなり、内曲しています。 腹葉は卵形で離在し、茎の約3倍幅、全縁で、浅く2裂しています。
上は葉を1枚外して腹葉と腹片を拡大しています。 腹葉や下の背片には眼点細胞らしいものが写っています。 上で平凡社に従えばホシオンタケヤスデゴケになると書きましたが、和名の「ホシ」はこの眼点細胞らしいものに由来します。
この眼点細胞らしいものについては、真の眼点細胞(ocellus)ではなく,ocellus-like cell(眼点のような細胞)とそこから生じる gemma(無性芽)とされています(古木:2019、古木:2020)。 なお、このような“眼点のような細胞”のあるタイプは、無いものに比較して、産地は限られているようです。
上は背片で、背縁基部はやや耳状に膨らんでいます。
上は背片の葉身細胞です。 1年以上前の標本で、油体は消えています。
【参考文献】
片桐知之・古木達郎(2018).日本産タイ類・ツノゴケ類チェックリスト,2018.Hattoria9:53-102.
古木達郎(2019).ホシオンタケヤスデゴケ Frullania schensiana var. punctata の眼点細胞.蘚苔類研究12(1):31.
古木達郎(2020).オンタケヤスデゴケ Frullania schensiana の無性芽.蘚苔類研究12(3):76-78.






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