2020-07-18
フタスジモンカゲロウ(亜成虫)とトウヨウモンカゲロウ(成虫)
上はフタスジモンカゲロウ(以下、略してフタモン) Ephemera japonica のメスの亜成虫でしょう。 公衆トイレの壁で雨宿り(?)していました。(2020.7.8. 大阪府 箕面公園で撮影)
カゲロウの仲間は、水中生活の幼虫から羽化して飛び立つのは「亜成虫」で、この亜成虫が脱皮して成虫になるという「半変態」を行います。 翅が伸びた後に脱皮する昆虫はカゲロウの仲間だけです。
なお、本種の成虫の翅は透明ですが、黒色の複眼や、腹部背面に体節ごとに左右一対の斜めの暗色紋がある(和名の「フタスジ」の由来)など、体の他の部分の特徴は、亜成虫と成虫とで大きな違いはありません。
上はオスの亜成虫でしょう。 オスの方が複眼が少し大きく、前脚の長さが長くなります。 翅が光っているのは光の当たり方の違いでしょう。(2013.7.14. 大阪府 岩湧山で撮影)
亜成虫は1日ほどで成虫になりますが、成虫の口吻は退化していて何も食べず、数日のうちに交尾・産卵をして一生を終えます。 この成虫の時期のはかなさが陽炎に例えられる所以なのでしょうね。 ただし時期をずらして次々と羽化してきますので、本種の成虫は6月から9月にかけて見られます。
下は本種によく似た同属のトウヨウモンカゲロウ Ephemera orientalis の成虫で、腹部の模様が異なります。 撮りにくい所にいて、無理に撮ろうとして飛ばれてしまい、写真はこれだけですが、フタモンの成虫の写真がありませんでしたので、成虫の翅が透明である点でも似ているトウヨウを載せておきます。(2012.7.4. 京都府 童仙房で撮影)
なお、河川ではフタモンは上流に、トウヨウは下流にと、棲み分けが見られます。
※ 上は最近の観察と Part1の 2013.8.10.の引っ越し記事とのミックスです。
2020-07-17
ツクシヤバネゴケ
表面を水が流れる岩上に広がる黒緑色のもの、拡大すると・・・
ツクシヤバネゴケ Cylindrocolea recurvifolia でした。
本種に腹葉はありません。 以前腹面から撮った写真を載せていますので(こちら)、今回は背面からの写真にしました。 葉は1/3ほど不等に2裂し、腹側の裂片の方が大きくなっています。
たくさん髭のようなものが出ているように見えますが、全て表面に付着したケイソウでしょう。
葉は長さと幅がほぼ同長で、0.1~0.2mmです(上の写真)。
上は葉身細胞です。 厚壁で、トリゴンはあるような無いような・・・。 油体は各細胞に1~数個、ほぼ球形で均質です。
(2020.6.24. 奈良県宇陀市)
2020-07-16
ニセマイコガ科の1種の幼虫
上の写真、シダはトウゴクシダだと思うのですが、その表面に小さなミノムシのようなものがついています。 この小さなミノムシのようなものは、いろんな種類のシダについていました。 下の写真では赤い○で囲んだ3箇所についています。
上で「小さなミノムシのようなもの」と書きましたが、ミノムシにしては少し変です。 周囲の葉にかじられたような形跡はありませんし、“蓑”の表面についている丸いものは何でしょうか。 私も最初はミノムシだと思い、引っ張ってみたのですが、簡単には取れませんでした。
そして、これのついている葉のちょうど裏を見ると・・・
上の写真のようにクモの巣のようなものが見られます。 最初は偶然だろうと思っていたのですが、よく見ていくと、葉の表の“ミノムシ”とその裏の“クモの巣”は完全に対応しています。
こうなると、巣を取り除いてみるしかありません。 注意深く取り除くと・・・
中にいたのは上の写真のような幼虫でした。 体の後半は隠されているようです。 そしてクモの巣状の糸に隠されていた部分の胞子のうがなくなっています。 離れた場所の胞子のう群は、まだ中の胞子が十分成熟していない時期らしく、包膜に覆われています。
つまり、葉の表側の“ミノムシ”と葉の裏側の“クモの巣”は葉を貫通してつながっていて、幼虫は葉の裏の胞子のうの中の胞子を食べて育ち、胞子のうを材料として“ミノムシ”を作っておいて、イザという時にはこの中に逃げ込むのでしょう。 ということで、ここで名称変更します。 これまでの“ミノムシ”は、以後“シェルター”と書くことにします。(胞子と胞子のうの関係はノキシノブのところを見てください。)
じつは上の写真にはからくりがあります。 上の写真は“シェルター”を軽く叩き、幼虫が出てきた所を撮ったものです。
上は斜め横から撮ったものです。 さすがに“シェルター”と幼虫を1枚の写真に収めることはできませんが、幼虫の体の後半が“シェルター”に入っていることは、この角度の方が分かりやすいですね。
この幼虫についてはAclerisさんがブログに載せられています。 それによると、雑誌「昆虫と自然」の2003年12月号に「ミクロレピの世界」が特集されていて、この幼虫はニセマイコガ科の Calicotis sp. として載せられているということです。 なお、ミクロレピとは Micro Lepidoptera つまり「小蛾類」のことです。
※ 上は 2013.7.19.に「堺自然ふれあいの森」で撮影し、Part1の 2013.7.25.の記事にしていたものを、こちらに引っ越しさせたものです。
2020-07-15
シナチヂレゴケ
コンクリート製の擬木の上に広がるシナチヂレゴケ Ptychomitrium gardneri です。
湿っている葉は反り気味で、葉縁には鋸歯があります。蒴は長楕円状円筒形です。 前に帽を被った蒴を載せていますが(こちら)、今回は蒴歯が見えています。 蒴歯の長さはナガバチヂレゴケなどに比較すると、かなり短いようです。
上の写真では、葉の長さは4mmほど、蒴柄の長さは7mmほど(平凡社の図鑑では7~12mm)あります。 少し乾いてきていて、葉は内曲してきています。 多くの場合、蒴は1ヶ所から1本ですが、上の写真のように2~3本出ていることもありました。
葉は全体として見れば披針形ですが、基部は少し幅広く卵状楕円形で、縦しわがあります。 上部には鋸歯があり、下部は全縁です。
上は葉先付近です。 中肋は葉頂に達していて、鋸歯は数細胞からなっています。
(2020.7.8. 大阪府 箕面公園)
◎ こちらでは蒴歯の様子をもう少し詳しく見ています。
2020-07-14
マルトビムシの一種
朽木にいたマルトビムシの一種、体長は 2.2mmでした。 マルトビムシの仲間の胸部は、退化しているとも腹部と融合しているとも言われていますが、いずれにしても目立つのは頭部と腹部(注1)だけで、クモの仲間のようにも見えますが、肢は3対(6本)で、昆虫に近い仲間(注2)です。
(注1) 胸部と融合しているのなら、腹部だけではないので、胴部と言うべきかもしれません。
(注2) トビムシなどの内顎類と昆虫とを含めて六脚類と呼んでいます。
6節ある腹部も、第1~4節は融合していて、つるんとしている種が多く、写真の種の腹部も真珠のような光沢を持っています。 なお、腹部のうちの第5~6節は尾節となっていて、横から撮った下の写真には尾節も写っています。
上の写真には跳躍器も写っています。 いざという時には、普段は腹面にたたみ込まれている跳躍器を伸ばすことで見事なジャンプを見せてくれます(この大きさで数cmジャンプします=視界から消えます)。 トビムシの名前はこのことに由来します。
(2020.7.14. 兵庫県 摩耶山)
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