2020-07-16

ニセマイコガ科の1種の幼虫


 上の写真、シダはトウゴクシダだと思うのですが、その表面に小さなミノムシのようなものがついています。 この小さなミノムシのようなものは、いろんな種類のシダについていました。 下の写真では赤い○で囲んだ3箇所についています。


 上で「小さなミノムシのようなもの」と書きましたが、ミノムシにしては少し変です。 周囲の葉にかじられたような形跡はありませんし、“蓑”の表面についている丸いものは何でしょうか。 私も最初はミノムシだと思い、引っ張ってみたのですが、簡単には取れませんでした。
 そして、これのついている葉のちょうど裏を見ると・・・


 上の写真のようにクモの巣のようなものが見られます。 最初は偶然だろうと思っていたのですが、よく見ていくと、葉の表の“ミノムシ”とその裏の“クモの巣”は完全に対応しています。
 こうなると、巣を取り除いてみるしかありません。 注意深く取り除くと・・・


 中にいたのは上の写真のような幼虫でした。 体の後半は隠されているようです。 そしてクモの巣状の糸に隠されていた部分の胞子のうがなくなっています。 離れた場所の胞子のう群は、まだ中の胞子が十分成熟していない時期らしく、包膜に覆われています。
 つまり、葉の表側の“ミノムシ”と葉の裏側の“クモの巣”は葉を貫通してつながっていて、幼虫は葉の裏の胞子のうの中の胞子を食べて育ち、胞子のうを材料として“ミノムシ”を作っておいて、イザという時にはこの中に逃げ込むのでしょう。 ということで、ここで名称変更します。 これまでの“ミノムシ”は、以後“シェルター”と書くことにします。(胞子と胞子のうの関係はノキシノブのところを見てください。)
 じつは上の写真にはからくりがあります。 上の写真は“シェルター”を軽く叩き、幼虫が出てきた所を撮ったものです。


 上は斜め横から撮ったものです。 さすがに“シェルター”と幼虫を1枚の写真に収めることはできませんが、幼虫の体の後半が“シェルター”に入っていることは、この角度の方が分かりやすいですね。

 この幼虫についてはAclerisさんがブログに載せられています。 それによると、雑誌「昆虫と自然」の2003年12月号に「ミクロレピの世界」が特集されていて、この幼虫はニセマイコガ科の Calicotis sp. として載せられているということです。 なお、ミクロレピとは Micro Lepidoptera つまり「小蛾類」のことです。

※ 上は 2013.7.19.に「堺自然ふれあいの森」で撮影し、Part1の 2013.7.25.の記事にしていたものを、こちらに引っ越しさせたものです。