2021-04-19

蒴をつけたイワイトゴケ

 蒴をつけた写真のコケは・・・

 上の写真では、枝は葉を含めて 0.3mm以下、蒴柄の長さは 2.5mmです。

 葉は卵形の基部からやや急に舌状に伸び、円頭で、上の写真では長さ 0.7mmです。

 上は葉の基部の卵形の部分で、葉縁の様子と葉身細胞を同時に見ています。 葉身細胞は方形ぎみの六角形で、やや横(写真では縦方向)に長くて 10μmほどあります。

 イワイトゴケとコバノイトゴケはよく似ているのですが、以上の葉形、葉や葉身細胞の長さなどから、イワイトゴケ Haplohymenium triste と判断しました。

 上は蒴歯です。 外蒴歯しか目立たず、外蒴歯の中上部は大きなパピラがあります。

(2021.4.7. 神戸市北区有馬町)

◎ イワイトゴケはこちらやこちらにも載せています。


2021-04-18

コメリンスゴケ

 


 同じヒラゴケ科ヒラゴケ属に分類されているコメリンスゴケ Neckera flexiramea とチャボヒラゴケが樹幹で混生していました。 分類的に近い種の混生はコケの世界ではよくあることです。


 茎は長く伸びて曲がりくねりながら垂れ下がります。 枝は少数で短く、葉は扁平についています。 葉には著しい横しわがあり、長さは 1.5~2mmです。


 プレパラートにすると葉の横しわはあまり目立たなくなります。 中肋は短く、2叉するか、そのうちの1本が目立たなくなります。

 葉先は広く尖っています(上の写真)。

 翼部の分化はわずかです(上の写真)。

 葉身細胞は長楕円形~線形で、長さは 30~60μmです(上の写真)。

(2021.4.7. 神戸市北区有馬町)

◎ コメリンスゴケはこちらにも載せています。







2021-04-17

マキノハネゴケ

 

 木の枝に着生している上の写真のハネゴケは・・・


 上の2枚の写真は、1枚目は腹面から、2枚目は背面から撮った写真です。 一見ヨコグラハネゴケに似ているのですが、これに特徴的な途中から折れている葉はみあたりません。
 側面で頻繁に分枝していますが、ハネゴケ属(Plagiochila)の分類では、この分枝型が大切で、平凡社の図鑑の検索表でも分枝型が重視されています。 平凡社のハネゴケ属(Plagiochila)の検索表を使うには、分枝がムチゴケ型、ハネゴケ型、ヤスデゴケ型のいずれであるかを見る必要があります。
 ムチゴケ型とハネゴケ型はいずれも枝の起源となる細胞が茎の髄の細胞に由来しますので、枝は茎の内部から表皮を突き破って出てくるため、突き破られた表皮は襟として観察できます。 ムチゴケ型の枝は腹葉の腋つまり腹面に出るのに対し、ハネゴケ型の枝は側葉の腋つまり茎の横に出ます。
 これに対し、ヤスデゴケ型の枝の起源となる細胞は側葉の腹片になる細胞に由来しますので、表皮は破られず、したがって襟は存在しません。


 上の2枚はこのハネゴケの分枝の型を観察するため、分枝付近の葉を取り除き(完全に取り除けず、葉の基部が残っています)、撮った写真ですが、襟は無いようです。 比較のため、襟のあるキハネゴケの分枝の様子を下に載せておきます。

(参考) キハネゴケ (2021.3.1.撮影)

 観察しているハネゴケがヤスデゴケ型分枝をすることは分かりましたが、ほとんどがヤスデ型分枝なのか、ヤスデゴケ型分枝「も」するのかは保留して観察を続けます。

 上は葉(側葉)です。 ハネゴケ科の葉は瓦状についていますから、上の写真の上側の縁が腹縁、左下が背縁になります。 背縁基部は長く下延し、背縁はやや外曲して葉先に近い所に1~2歯があり、葉先は切頭で2~5歯があり、腹縁には5~10歯があります。 腹縁基部はやや耳状に張り出して短く下延しています。

 上は葉身細胞で、トリゴンが発達していて、細胞壁には所々中間肥厚が見られます。 油体はブドウ房状です。

 上の黄色の円内に腹葉があります。 腹葉は痕跡的で、殆ど葉に隠されていますので、葉を取り除いて撮っています。

 以上の観察結果から、このコケはマキノハネゴケ Plagiochila nepalensis (平凡社の図鑑では旧学名の P. gollanii になっています)ではないかと思いました。 分布は埼玉県以南となっています。 しかし平凡社の図鑑では検索表にあるだけで、不安に思い、Mさんに資料を送っていただきました。 送っていただいた資料の、服部1949(植物研究雑誌第24巻)および M. L. So vol. 60 の図および解説を見ても、概ね一致しています。

(2021.3.3. 宮崎県日南市)

2021-04-16

キンシゴケ

 

 写真はキンシゴケ Ditrichum pallidum だと思います。 崩れてできた裸地に育っていました。

 葉の長さにはかなりの幅がありますが、茎の上部につく葉は長い傾向にあるようです。

 葉の基部は卵形でやや透明、中肋の境界は不明瞭です(上の写真)。 翼部の細胞の分化は見られません。

 上は葉鞘部から少し上の細く針状に伸びている部分で、葉身細胞は矩形で平滑です。 葉はやや溝状に凹んでいて、左右両方の葉縁を明瞭に撮ることはできません。

 上は葉の先端部で、細かい歯があります。

 上は葉の中ほどの横断面です。 ガイドセルの背腹両側にステライドが発達しています。

(2021.3.3. 宮崎県日南市)

◎ こちらには本種の蒴を中心に載せています。

2021-04-14

オオスミクサリゴケ

 

 ヤスデゴケを調べてもらおうと、上の写真をM氏に送ったところ、混生しているクサリゴケが気になると連絡をいただきました。 Lejeunea(クサリゴケ属)と思っていたコケですが、写真を送って見ていただいたところ、Cheirolejeunea(シゲリゴケ属)のコケで、オオスミクサリゴケかもしれないと、資料を送っていただきました。

 上がそのコケで、背片は長さが幅よりも長く、卵形です。 腹片は背片の1/3ほどの長さです。

 上は腹片で、歯が1つあります。

 上は腹葉です。 腹葉は円形で、茎の4倍ほどの幅があり、2裂しています。

 上は、M氏に送る前に私が見ていた写真で、葉身細胞には小さな油体がたくさんあると思い、Lejeunea(クサリゴケ属)としていました。 しかし、M氏に写真を送るに際し、あまりにもゴチャゴチャしすぎているので、もっと油体の少ない所を撮り直したのが下の写真です。

 上の写真を見ると、油体は大きく少数で、ブドウ房状です。 このような油体は、たしかに Cheirolejeunea(シゲリゴケ属)のものです。

 平凡社の図鑑でシゲリゴケ属の検索表をたどると、オンタケクサリゴケまたはオオスミクサリゴケになります。 検索表からするとリュウキュウシゲリゴケ Cheilolejeunea ryukyuensis の可能性も出てきますが、これは香港と琉球のみで記録されているようなので、とりあえずスルーします。
 オンタケクサリゴケとオオスミクサリゴケもよく似ていて、水谷(1980)によって主に腹片の歯と花被や雄花序に注目して整理されています(蘚苔地理雑報第8巻第7号)。 平凡社の検索表ではこの2種腹片の歯牙の違いを次のようにしています。
  オンタケ:不明瞭で卵形の1細胞
  オオスミ:明瞭で1~3細胞、楕円形で尖る
 なお、シゲリゴケ属では、第1歯牙がほとんど発達せず、歯牙は第2歯です。


 上の2枚は、採集した標本がほんのわずかしかなく、なかなか観察し易い歯牙が無かったのですが、歯牙に注目して撮り直した2カ所の腹片です。 オンタケクサリゴケではほとんど歯牙の分からない腹片もあったのですが、今回のコケはどの腹片も歯牙が確認できましたので、オオスミクサリゴケ Cheilolejeunea osumiensis としたいと思います。 いただいた資料(服部植物研究所報告No.50)の図には細長い三角形に近い大きな歯牙があるのですが、上の写真も手前の細胞に隠されて歯牙の一部しか見えていない可能性も考えられると思います。 なお、本種の分布は平凡社では福島県~屋久島となっています。

(2021.3.3. 宮崎県日南市)