2025-10-14

メダカナガカメムシ

 上はメダカナガカメムシ Chauliops fallax です。 オカモス関西の観察会で、JR道場駅近くのクズの葉の裏にたくさんいました。 体長2~3mmの小さなカメムシで、逃げ回ってピントが合わないので、持ち帰って撮りました。
 本種はクズやダイズなどのマメ科植物から吸汁します。 この虫が増えてやっかいもののクズが減少するといいのですが、小さな虫ですので、増えても植物の成長に影響を及ぼすに至らないのでしょうか、ダイズやアズキなどの農業害虫としても、さほど重要視されていないようです。
 和名は、上の写真のように複眼が側方へ突出するところからでしょう。 日本産のメダカナガカメムシ科に分類されているのは、このメダカナガカメムシと、クワにつくオオメダカナガカメムシの2種だけです。

 下は Part1の 2013.7.1.に載せていた写真で、同日に堺自然ふれあいの森で撮りました。 交尾中で動きが鈍く、撮り易かったようです。


 なお、本種の幼虫をこちらに載せています。 上と同じ堺自然ふれあいの森で2013.9.11.に撮影しました。

 

2025-10-13

ツメレンゲ

 下は Part1の2012.11.9.を少し修正した引っ越し記事で、写真は2枚目が海南市で11月中旬に、他は全て槇尾山で11月上旬に撮影したものです。

 ツメレンゲは、ベンケイソウ科イワレンゲ属に分類される多年生の多肉植物で、関東以西の本州、四国、九州に分布します。
 多肉植物は多くの水分を組織内に貯えていて、乾燥に耐えることができます。 雨の多い日本でも、雨がしみ込まない岩上など、乾燥し易い所には、そのような多肉植物が見られます。 ツメレンゲも、他の植物がなかなか生きられない乾燥した岩場が本来の自生地です。

 上の写真のように年代を経た瓦屋根に生えているのも見かけることがありますが、このなかには、水分を多く含んだツメレンゲにより火災の延焼を防ごうと、意図的に移植されたものもあるようです。

 ツメレンゲは、他の植物がなかなか生きられない厳しい環境に生きている植物ですから、その成長はゆっくりです。 風に乗って運ばれてきた種子が発芽しても、開花までは3年ほどかかります。 この間は下のようなロゼットで過ごし、周囲に子株を形成していきます(上の写真)。
 ツメレンゲの名前は、このロゼットの様子を蓮華(れんげ)座(=仏様の台座)に見立て、また、葉の先端が尖っているのを獣の爪に見立てたものと思われます。

 花が咲くのは10月~11月です。 それまでロゼットで生活していたものの中央が伸び上がり、最初の写真のような塔状の花穂を形成します。 花は花穂の下から上へ順に咲いていきますが、花を咲かせることとその後の種子形成に貯えていた栄養分を使い果たし、開花した株は枯れてしまいます。
 1つの花は、花弁は5枚で白色、オシベは10本、メシベは5心皮からなります(上の写真)。
 ツメレンゲは、上に書いたように、乾燥という厳しい条件下でも生きられる逞しい植物ですが、ロゼットの時期に上を他の植物に覆われてしまうと光合成できなくなり、植物間の生存競争には弱い植物です。 限られた環境でしか生存できず、生長には時間がかかり、そこに人の営みによる悪影響が加わり、個体数は減少してきています。
 ツメレンゲはクロツバメシジミの主要な食草でもあります。 ツメレンゲの減少と共に、クロツバメシジミの絶滅も危惧されています。

2025-10-12

クロツバメシジミ

 上はクロツバメシジミ Tongeia fischeri でしょう。 10月8日のオカモス関西のコケ観察会で、JR道場駅~千苅浄水場間で撮影しました。
 本種は、ツバメシジミヤマトシジミなどと似ていますが、黒斑や赤斑の位置、細く短い尾状突起などで区別できます。 和名は翅表の一様な黒っぽい色に由来します。 年3~4回羽化するようで、4月~11月に見られます。
 幼虫の食餌植物はツメレンゲ・イワレンゲなどのベンケイソウ科の植物で、これらの植物の分布が局地的であるため、このチョウの分布も局地的です。 上記のコースの岸壁にはツメレンゲが多く見られます(下の写真)。

ツメレンゲ(左)とオニヤスデゴケ(右)

 クロツバメシジミは、あまり飛び回ることをしないチョウです。 遠くに行っても食餌植物が無いからかもしれません。 ですので、撮影は楽ですが、残念だったのは翅を開いてくれなかったことです。 カメラを恐れることもなく、マイペースで吸蜜するおっとりしたチョウでした。

2025-10-11

オニヤスデゴケ

 

 上の写真、フデゴケに囲まれて育つのはオニヤスデゴケ Frullania nepalensis でしょう。 神戸市の千苅浄水場の岩上です(2025.10.8.撮影)。

 植物体は赤褐色で、新しく伸びた所だけ緑色が残っています。 上の写真のスケールは数字の単位がmmです。

 上は腹面から撮っています。 背片は円頭で、上の写真では少し分かりにくいのですが、葉先は内曲しています。 腹片は帽状で、嘴は少し内曲し、嘴の先は丸くなっています。 腹葉は広卵形~円形で、茎の幅の3~3.5倍幅です。

 上は背片です。 本種の背片は卵形で、背縁基部は舌状~円形に大きく膨らみ、耳状になっています(赤い円で囲った部分)。

 上は腹葉です。 縁は幅狭く内曲し、先端は1/7~1/6まで2裂します。 基部は心形で両端は耳状に膨れます。 腹葉の基部を茎からきれいに外すのは難しく、破れてしまいがちですので、明瞭に耳状に膨れた所を赤い円で囲っておきました。
 シコクヤスデゴケ F.valida は背片基部が耳状になるなど、本種によく似ていますが、腹葉の基部が耳状にならないことで区別できます。

 上は背片の葉身細胞です。 

◎ オニヤスデゴケはこちらにも載せています。

2025-10-10

イトコミミゴケ

 岩上にある写真の細長いコケは、イトコミミゴケ Lejeunea parva でしょう。 10月8日に神戸市の道場町にある千苅浄水場で実施されたオカモス関西のコケ観察会で見られました。

 本種の分類されているクサリゴケ科は、腹片がポケット状になっていて、多くは小形のコケです。 クサリゴケ科は、系統的にはかなり進化したグループで、多くの種に分化し、現在の地球環境下で栄えています。 具体的に数値で示すと、片桐・古木(2018)の日本産タイ類・ツノゴケ類チェックリストではクサリゴケ科は 23属133種となっていて、種数の多さでは苔類の中でクサリゴケ科が突出しています。 これらのことからも、コケ植物は下等な植物で大きくなれないのではなく、少なくともあるグループでは小さくなるように進化してきていると言えるのではないでしょうか。

 小さなコケなので、以下は顕微鏡での観察です。

 枝分かれは少なく、葉を含めた茎の幅は 0.3~0.4㎜です。 上は腹面から撮っています。腹葉はピントがずれていて、ぼんやりとしか写っていません。 背片は丸みを帯びた三角形、腹片は背片の1/2ほどの長さです。

 上は腹面を斜め上から見下ろす角度で撮っています。 本種の背片は湿ると背方に偏向します。 腹葉の基部から仮根が出ています。
 下は上の緑色の線の部分で切った断面です。

 茎の髄細胞の数は、切り方がまずくはっきりしませんが、9~11個でしょう。 Lejeunea(クサリゴケ属)の茎の髄細胞の数は植物体の大きさを示す指標となり、平凡社の検索表では、3~5個、約7個、10~12個の3段階に分かれています。  Lejeuneaの多くの種は約7個のグループに入り、本種も約7個なのですが・・・。 採集したうちのいちばん大きくみえる茎を切ったからでしょうか。

 上は腹葉です。 腹葉は茎径の約2倍長で、長さと幅がほぼ同じ、2/5までV字形に2裂し、裂片は狭三角形です。

 腹片を拡大しました(上の写真)。 歯牙細胞は長楕円形です。

 上は表皮細胞で、ベルカ(verruca:細胞の表面にある微小突起)があります。

◎ イトコミミゴケはこちらこちらにも載せています。