2018-02-25

タチヒダゴケ(コダマゴケ)の蒴の断面



 樹幹のタチヒダゴケ Orthotrichum consobrium、環境にもよるのでしょうが、この場所では蒴をつけている植物体の葉は褐色で、つけていない植物体の葉は緑色でした。(2018.2.23. 堺自然ふれあいの森)

 タチヒダゴケ属( Orthotrichum )の蒴には気孔があるのですが、気孔が沈生の種と表生の種があり、平凡社の図鑑のこの属の検索表はこの違いから始まっています。
 タチヒダゴケの気孔は沈生で、前に蒴の表面から撮った写真を載せたことがあります(こちら)。 今回は蒴の横断面を作り、この時期の蒴の内部の様子と、そこから分かることを考察すると共に、沈生の気孔の断面を観察してみました。


 上は帽を取り去った蒴です。 これを輪切りにしてプレパラートを作成し、撮影したのが下です。


 下に拡大した写真を載せていますが、表皮の黒くなっている6ヶ所が気孔の位置でしょう。 黒くなっているのは沈生している所に空気が入り込んだためと思われます。 そして、気孔の位置は蒴の周囲の全く同じ高さの所にきれいに並んでいるのではなく多少の上下があって、上の切片には表れていない気孔もあるるとすると、気孔は蒴の表面に縦に8列に並んでいるのではないかと思います。 また、気孔付近では蒴壁の葉緑体に富んだ細胞が表皮に接する所まであるのに対し、気孔のある場所から離れると、表皮近くの蒴壁を構成する細胞の葉緑体は少なくなっています。

 タチヒダゴケの太い蒴は、胞子が完成すると、胞子を押し出すように縮み、8本の縦の条ができます(こちら)。 この条は、上記の蒴壁の葉緑体に富んだ細胞と葉緑体の少ない細胞との収縮の差によって生じるのではないでしょうか。

 下は上の赤い四角の部分の倍率を上げて深度合成した写真です。


 上の写真で、aは軸柱、bは胞子になる部分ですが、まだ胞子母細胞の段階かもしれません。 そして赤い円で囲った部分が気孔です。


 上は気孔の周辺をさらに拡大したものです。 気孔は沈生していますがその上に位置する表皮細胞の縁は少し盛り上がっています。


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