2021-05-22

キヘチマゴケ

 上は土の斜面に生えていたヘチマゴケの仲間ですが、平凡社の図鑑には「(ヘチマゴケ属の)分類は容易でない。」と書かれています。
 平凡社の図鑑(2001年)より後に書かれている秋山・山口(2008)によると、写真のコケはキヘチマゴケ Pohlia annotina になると思います。 なおこの論文では、平凡社の図鑑のキヘチマゴケにあてられていた学名は、コンペイヘチマゴケ(新称)の学名となっています。 また、ケヘチマゴケとキヘチマゴケが同種か別種かは今後解明すべき疑問とされています。

 茎の長さは1cmに満たず、葉の長さは1mmほどです。 葉は乾いてもあまり縮れていません。


 上の2枚は葉とその先端部です。 葉は披針形で、葉縁に舷はなく、上部には小歯があり、葉の基部は茎に下延しています。

 葉身細胞は線状六角形~線形で、長さは 60~95μmです(上の写真)。

 蒴は洋梨形です。 僧帽型の帽は薄い膜状で、嘴があります。 頸には白い小さな斑紋がありますが、気孔に関係するのでしょうか。

 上は蒴の頸部の表面の顕微鏡写真で、たくさんの気孔が見られます。

 蒴が若いために蓋を外すことが難しく、蒴歯の観察はきっちりできませんでした。 上はカバーグラスの上から叩いてできた蓋と壺の隙間から蒴歯を見ています。 外蒴歯には細かいパピラがあり、内蒴歯も存在は確認できますが、詳細は観察できませんでした。

 上は無性芽で、おしぼり状です。 1~2枚目の写真を見ても、無性芽はほとんど目立ちませんが、観察している下には、たくさんの無性芽が落ちていました。
 上の写真では色がはっきりしませんが、無性芽は緑色でした。 この無性芽は古い標本では黄色味を帯びるようで、和名はそのことから来ているのだろうと思います(この仲間の分類には無性芽の特徴が大切です)。

(2021.4.20. 京都府相楽郡精華町)

【参考文献】
秋山弘之,山口 富美夫(2008):無性芽を有するヘチマゴケ属(ハリガネゴケ科,蘚類)の研究 1.日本産キヘチマゴケとその近縁種の再検討.蘚苔類研究9(9)p.279-290.

◎ キヘチマゴケはこちらにも載せています。

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