2025-03-05

井上・山口(2024)の「日本産セン類の分類表」について

  平凡社の『日本の野生植物 コケ』(2001年発行)には、日本産のコケの(当時分かっていた)すべての種の検索表が載せられていますが、発行から四半世紀が経ち、その間、コケ植物の分類体系は分子系統学的手法を取り入れることで大きく変更されています。
 コケ植物の多様性を体系的に把握するには種までの分類表が望まれます。 コケ植物全体の系統は、COLE T.C.H. ら(2023)の「コケ植物系統樹ポスター」で俯瞰することができるのですが、ここで示されているのは目と主な科までです。
 タイ類・ツノゴケ類については、片桐・古木(2018)の分類表と種名チェックリスト(下記文献)がありますが、蘚類については、これまでこのようにまとめられたものはありませんでした。 日本産セン類の種名目録は鈴木(2016)にあるのですが、それぞれの種の属する科は分かりません。
 このような状況下にあって、昨年、望まれていたセン類の新しい分類表が示されました。
 井上侑哉・山口富美夫:日本産セン類の分類表. Hikobia19(2). 2024.
です。
 この論文では、2023年12月末までに出版された文献に基づき、日本から報告されているセン類の分類群について、綱・亜綱・目・科・属の分類表が載せられています。 種までは載せられていませんが属まで分かると、ほぼなんとかなります。(本分類表の基礎にもなっている種名についても、日本産セン類チェックリストが近く出版されるようです。) なお、この論文は、2025年1月20日からは J-STAGE からダウンロードできるようにもなりました。

ハイゴケ科から新しく作られたクサゴケ科に移されたクサゴケ(2025.2.12.撮影)

  分類は現在理解されていることの集大成と言えるでしょう。 研究が進むにつれ、これからも分類は変化するでしょうが、セン類に関しては当面はこの分類表がベースになるでしょう。 『ミクロの世界のコケ図鑑』もこの分類表に従って見直しを行いました(こちら)。

【参考文献】
片桐知之・古木達郎:日本産タイ類・ツノゴケ類チェックリスト,2018.Hattoria 9.

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