2025-08-20

セイタカヤリカツギ


 写真はセイタカヤリカツギ Encalypta streptocarpa でしょう。 石灰岩上で育っていました。 なお、本種は平凡社では シナノセンボンゴケ E. procera となっていて、セイタカヤリカツギの和名もありません。 このあたりの経緯は岩月ら(2008)や佐藤ら(2024)に書かれています。

 湿ると上のように葉が開きます。

 葉腋には褐色で糸状の無性芽がついています。 上の写真は無性芽が分かるように手前の葉を取り除いて撮影しています。 なお、本種の胞子体は国内では確認されておらず、この無性芽で増えているものと考えられています。

 葉はへら形で、長さ4~4.3㎜、葉先は鈍頭です。

 上は葉先付近を背面から撮っています。 中肋は太いままで葉先に届かずに終わり、末端付近には小さな歯がたくさん見られます。

 葉身細胞は方形~六角形で径10~13㎛、各細胞に先の分かれたパピラが数個あります(上の写真)。

 葉の基部は、長方形で透明な細胞からなり、舷があります。 上は葉身細胞との境を撮っています。


 上の2枚の写真は無性芽です。 成熟した無性芽は枝分かれした先に作られています。

(2025.8.18. 伊吹山)

【 参考文献 】
岩月善之助・鈴木直・木口博史 (2008).日本に生育する糸状の無性芽を持つ Encalypta (ヤリカツギ属)の種.蘚苔類研究 9(10): 311-318.
佐藤匠・井上侑哉・山口富美夫 (2024).セイタカヤリカツギ Encalypta streptocarpa を宮崎県に記録する.植物地理・分類研究 72(2): 147-151

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