2015-10-23

イワマセンボンゴケ


 赤茶けた岩に鮮やかな濃い緑色をしたコケ、イワマセンボンゴケ( Scopelophilla ligulata )です。 「イワマ」は「岩の間」の意味のようです。
 岩肌の赤茶けた色は鉄分が多いからでしょう。 鉄はもちろん植物にも必要ですが、土壌中の多すぎる鉄分は植物の生長を阻害するようで、特にリン酸の固定力を高めることで植物がリン酸を吸収しにくくしたり、拮抗作用によってカリウムイオンの吸収を阻害するようです。
 コケの仮根は体を固定させるためのもので、吸収は植物体全体で行うのですが、多量の鉄イオンの有害性は維管束植物の根からの吸収の場合と同様でしょう。 ただ、イワマセンボンゴケは他のコケなどに比較して鉄イオンに対する耐性があるために、他のコケが育たない環境を“独り占め”できるのでしょう。


 育っていた所では上の写真のように葉が開いていますが、乾くとすぐに2つ折りになって縮れます。 下の写真の葉は水に漬けて広がっていた状態から取り出し、ティッシュで水分を吸い取って数十秒後です。


 そして縮れた葉を水に漬けても、なかなか広がりません。 このような吸収能力の低さが上記の耐性に関係しているのでしょうか。


 葉縁に舷は見られませんでした。 葉身細胞は六角形~矩形です。

(2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)

こちらでは銅イオンに耐性のある同属のホンモンジゴケと葉の比較をしています。


2015-10-22

コモチネジレゴケ




 写真は、京都市市街地のビルに囲まれた樹幹に育っていたコモチネジレゴケ( Syntrichia laevipila )です(2105.10.18.撮影)。 前に帰化種の苔類であるミカヅキゼニゴケを載せましたが(こちら)、コモチネジレゴケは帰化種の蘚類です。 原産地はオーストラリアと考えられていて、原産地では雄株も雌株も見られますが、日本でみつかっているのは雄株のみです。
 上の写真の多くの株で、葉腋や茎頂にたくさんの葉状の無性芽が見られます。 和名の「コモチ(子持ち)」の「子」は、この無性芽のことでしょう。 雄株からは胞子体は形成されませんから、この無性芽のみで分布を広げていると考えられます。


 葉は広いさじ形で、中肋は突出して透明尖となっています(上の写真)。


 葉身細胞にはC字型のパピラが見られます(上の写真)。

◎ コモチネジレゴケはこちらにも載せています。

2015-10-21

ナガシタバヨウジョウゴケ


 写真は渓流横のウツギの小枝についていたナガシタバヨウジョウゴケ( Cololejeunea raduliloba )です。


 ナガシタバヨウジョウゴケを枝から剥がし、腹面から撮ったのが上の写真です。 舌形の腹片が見られますが、腹葉はありません。


 上は腹片にピントが来るようにして顕微鏡( 10×10 )で撮ったものです。 この写真の赤い長方形で囲った部分が下です。


 腹片は第1歯が円頭で大きく第2歯は尖っています。


 上は背片の細胞です。 たくさんの油体が見られます。

(2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)

◎ 若い胞子体を持った本種はこちらに、胞子を飛散し終えた古い蒴をつけた本種はこちらに、腹片に見られるスチルスについてはこちらに載せています。



2015-10-20

アズマゼニゴケ@10月


 写真はアズマゼニゴケ(アズマゴケ:Wiesnerella denudata )です。 和名からは東国に多いイメージですが、むしろ西日本に多いようです。


 上は葉状体の裏側です。 腹鱗片はほとんど透明に近い色をしています。(こちらでは葉状体から取り外した腹鱗片を顕微鏡で観察しています。)

 ところで、1枚目の写真の葉状体は、丸い雌器托と雄器托を並べてつけています。 黄色っぽいのは精子を出し終わり、役割を終えた雄器托です。 雌器托は受精卵から胞子体を形成し、雌器托柄を伸ばして胞子を散布するという大仕事を控えており、緑色で元気なようです。
 下はこの雌器托と雄器托の断面です。


 上の写真は左が雌器托で、右が雄器托です。 雄器托は上に書いたように精子を放出した後のようで、造精器のつくりも確認できず、スカスカの印象です。
 雌器托の縁の巻き込んだ部分の、少しゴチャゴチャしたように見える所(黄色の長方形で囲った中央付近)に造卵器があります。 この長方形で囲った部分を顕微鏡で撮ったのが下の写真です。


 上の写真の中央のフラスコを逆さにしたようなものが造卵器ですが、卵細胞は既に受精して細胞分裂を繰り返し、若い胞子体になっているようです(細かい細胞がぎっしり詰まっています)。

(以上、2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)

 下は、2017.5.10.に高槻市出灰で撮影した、よく伸びた雌器托をつけたアズマゼニゴケです。


 まだ裂けていない胞子体も見えています。 この胞子体が裂けて胞子を散布している様子はこちらに載せています。
 下は胞子です。


こちらには、上のほぼ1ヶ月前にあたる時期の、柄がまだ伸びていない雌器托やその内部の様子などを載せています。

2015-10-19

コゴメゴケ


 写真は岩上を這っていたコゴメゴケ( Fabronia matsumurae )です。 たくさんの胞子体をつけていました。


 茎は長く這い、上のように、乾いた状態では葉は茎に接しています。


 葉の先は細く伸びています。 葉の上半分には目立つ歯があり、中肋は葉の中部にまで伸びています。

(2015.10.14. 高槻市川久保)

◎ コゴメゴケの乾いた時と湿った時の深度合成した写真をこちらに載せています。