2015-09-16

テローム説


 上はエノキの葉ですが、右上の葉の中央が深く裂け、まるで2枚の葉のようになっています。 また右下の葉は、先端近くが少し裂けているだけですが、葉脈を見ると、主脈が付け根近くから二股に分岐しています。
 上の写真は福岡のK.S.さんから送っていただいたものですが、写真のエノキではかなりの確率でこのような異常が起こっているようです。
 なぜこのような異常が起こるのか、この写真だけから結論は出せませんが、私がこの写真を見て頭に浮かんだのは「テローム説」でしたので、この機会にテローム説について少し書いてみたいと思います。

 陸上植物はシダ植物→裸子植物→被子植物と進化したと考えられていますが、これらの維管束植物の祖先と考えられる植物が、1917-1920年にかけてスコットランドのライニー地方のデボン紀の地層からたくさん発見され(ライニー植物群)、ごく初期の陸上植物についての情報が急に増えました。 それによると、どうやらごく初期の陸上植物は、平面的な葉のようなものは無く、地上部も地下部も二又分枝をした枝のようなものだけからなっていたようです。
 テロームとは二又分岐した枝先のことで、テローム説とは、上記の二又分枝をした枝のようなものから現在の植物の姿への移行(=進化)を説明しようとするものです。
 テローム説によると、現在見られるような葉は、立体的に配列していたテロームが平面的に横に並び、水掻きのようにテローム間を埋める組織が発達したり、テローム間に強弱の関係(=主軸と側枝の区別)が生じるなどにより、生じたと説明されています。 そして現生植物でも、古い形質を持ち続けている植物のなかには、この二又分岐が見られるものがいろいろあります。


 上はイチョウです。 イチョウは種子植物の中でも古い形質を持っているとされる裸子植物です。 イチョウの葉には主脈はありません。 そしてよく見ると、葉脈は全て二又分岐を繰り返しています。 この様子は、扁平化したテロームが互いに癒合した姿を連想させます。 また、イチョウの葉はしばしば葉縁の中央付近が凹みますが、これもテロームの癒合が不十分な状態とも見ることができます。


 上はイチョウの葉身の葉柄近くを陽にかざして撮り、イチョウの葉脈の二又分岐を分かり易くするために画像編集ソフトで明暗を強調したものです。

 古い形質をより多く持っているとされるシダ植物では、主脈のはっきりしたシダでも、多くの種の側脈は二又分岐をしています。


 上はウチワゴケです。 名前にコケとついていますが、小型のシダ植物です。 上の写真のようにウチワゴケには主脈が無く、葉脈は二又分岐を繰り返しています。

 話を初めのエノキの葉に戻します。 私たちも含め、現在地球上に生きている生物は過去からの遺伝情報を引き継ぎ、その遺伝情報に修飾を加えて活用している例がたくさんあります。 最初の写真のエノキも、もしかしたら他の遺伝子との関係で二又分岐の性質(=祖先から引き継いできた情報)が少し強く出る傾向があるのかもしれません。 その場合、エノキを含むニレ科の葉は主脈の左右が対称ではありませんから、そのことが少し関係したのかもしれません。

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