イヌマキ Podocarpus macrophyllus は関東以南の比較的暖かい地域に見られる雌雄異株の常緑樹で、葉は尖っていませんが、マツ目に分類される針葉樹です。 大気汚染や潮風にも強く、防風林や生け垣として人気があります。 また、枝を伸ばす力が強く、様々な樹形に仕立てあげ易いことから庭木としても人気があります。 尤も生け垣や大きな庭木を植えている庭自体が少なくなってきていますが・・・。
花は5~6月頃に咲き、雌株には種子が形成されていきますが(裸子植物なので果実ではありません)、その柄の一部(「花床」と呼ばれています)が膨らみ、下の写真のように赤くなっていきます。
上は11月上旬の撮影で、写真的にはいちばん美しい時期ですが、もう少し経つと花床は赤黒くなり、美味しく食べることができます。 もちろんイヌマキは人に食べてもらうのが目的ではなく、鳥に食べてもらい、その際に種子散布をしてもらうのがねらいでしょう。
木によっては、樹上に残った種子が発芽を開始することがあります。 この状態は、母樹からの栄養補給を受けながら育っているという意味で、「胎生種子」と呼ばれています。
上がその胎生種子です。 種子の中の胚が生長を始め、種皮の外へ幼根が伸び出しています。 花床は干乾び始めていて、イヌマキの胎生種子は花床に蓄えていた栄養分を使って発芽しているのかもしれません。 いくつかのイヌマキの胎生種子を見た印象では、花床が干乾びているほど、立派な幼根を出しているように思いました。
胎生種子が見られる植物としてはオヒルギがよく知られていて、これはマングローブ林という特殊な環境における適応と考えることができますが、イヌマキの胎生種子はどのような意義があるのでしょうね。
上は、分かり易いように周囲の葉を取り除いて撮ったイヌマキの胎生種子です。 たぶん種子の中に残っている子葉で栄養分を吸収し、その栄養分で幼根が伸び出しているのでしょう。
種子の断面を作ってみたのが上です。 断面作成時に子葉の一部が取れてしまったのですが、その下にもう1枚子葉があるのが見えます。
撮影データ
1枚目:2005.11.5. 大阪府和泉市
2~4枚目:2017.1.15. 奈良市および採集品を自宅で撮影
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