2017-01-18

ヒノキバヤドリギ


 上はツバキの枝についていたヒノキバヤドリギ Korthalsella japonica です。 上の写真では耐寒性を高めるためか赤褐色になっていますが、今の時期でも風当たりの弱い所では緑色で、自身で光合成を行い、宿主の組織内にも根を伸ばす半寄生の常緑小低木です。 葉は退化していて、光合成は扁平になった茎で行っています。


 雌雄同株で、枝の節に咲く花は、3枚の花被片が合着しています。 今は花の少ない時期のようですが、上は、雄花なら花被片がもう少し深く3裂しているはずで、3本のオシベらしきものも見当たらず、雌花(の咲き終わったところ)ではないかと思います。 そして・・・


 上が果実で、大きさは2mmほどしかありません。 果実の横にも雌花があります。


 果実は熟すと自ら破裂するようです。 果実のついた枝を1晩水に漬けておくと、上のようになりました。 熟すと、水を吸って膨れた果肉によって、もろくなっていた果皮が破れ、果肉に包まれた種子が放出されるように思います。



 1つの果実の中には果肉に包まれた1つの種子が入っています。 上は種子と果肉をピンセットで分けようとしたところですが、写真でも糸を引いているように、果肉には粘着性があります。


 ヒノキバヤドリギの扁平な枝の上に上の写真のうなものがありました。 種子が枝にくっつき、そこで根を出したようです。 種子にまとわりついている薄い膜状のものは果肉が乾いたものでしょう。 このように果肉は、その粘性で種子を枝にくっつけ、その後は乾いて種子の根が出るまで固定するのでしょう。
 同種の枝に寄生しては意味がないと思うのですが、このような種子はあちこちで見られました。 下の写真は別の種子ですが、乾いた果肉の多くをピンセットで取り除き、横から撮ったものです。


 ヒノキバヤドリギのことを検索して調べてみると、アリが種子散布に関係しているとあちこちに書かれています。 ネバネバの衣をまとった種子がどのようにして他の木に運ばれるのか、果皮が破れた勢いだけで種子が遠くにまで飛ぶものなのか疑問は残るのですが、上に書いたような果肉の特性を考えると、アリが木から木へとヒノキバヤドリギの種子を運ぶとは、私には考えられません。


 枝の維管束も奇妙な並び方をしています。 上は枝の断面で、白っぽく見えているのが維管束ですが、あちこち断面を作って調べても、いつも2つの維管束が写真のように向かい合って並んでいます。 維管束が2つというのも奇妙ですが、なぜ幅の広い方向に並ばないのかも不思議です。 顕微鏡で確認すると師管が外側に、道管が内側にあって、これは納得できるのですが・・・。

(2017.1.15. 奈良市白毫寺町)

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