2019-12-20
ミヤマタチヒダゴケ
上の写真はミヤマタチヒダゴケ Orthotrichum alpestre とタチヒダゴケ O. consobrinum の混生です。 笠井氏が今年の1月に滋賀県高島市マキノ町の風倒木で採集されたものを分けていただきました。 和名に「ミヤマ」とありますが、採集地は琵琶湖に近い所で、標高はそんなに高くありません。
蒴がたくさんついていますが、採集後に時間が経過しているため、まだ若い蒴が水分を失って縮み、ほとんどの帽が取れてしまっています。 また葉の色も緑色がうすれています。
ミヤマタチヒダゴケは平凡社の図鑑にも野口の日本産蘚類図説にも記載はありません。 従来ヨーロッパ、北アメリカやインドなどに分布することが知られていたコケですが、日本では、私の知る範囲ではタチヒダゴケ属の分類が再編成された Suzuki(2014)には記載があります。 それまでは他の種と混同されていたのか、新しく海外から入ってきたのかまでは調べていません。
上の写真は、中央の2つがミヤマタチヒダゴケの帽、その左右にあるのがタチヒダゴケの帽です。 前者の帽には毛があり、後者の帽に毛はありません。 今回はこれを目印に群落の中からミヤマタチゴケを選んで以下の観察を行いましたが、毛の付き方には違いがあるものの、帽に毛があるタチヒダゴケ属は他にもたくさんあります。
上は湿った状態で、帽の毛はくっついてしまい、見えません。 上部の葉の長さは 2.5~3mmです。
葉は狭楕円状披針形で全縁です。 中肋は葉先近くに達しています。
葉が折れ曲がって細胞を横から見る事ができるようになっている所を観察すると、低いパピラが確認できます(上の写真)。
上の2枚は、1枚目は葉の上部の、2枚目は葉の基部付近の葉身細胞です。
上は蒴を縦に2分割し、蒴の内容物を外に出して透過光で観察できるようにしたもので、黒く見えている所には、下に拡大するような気孔が存在しています。 気孔は蒴の中央部以下に集中しています。
上は気孔付近を撮ったもので、下は上とは別の気孔付近をさらに拡大して撮っています。 気孔は沈生で、写真の穴の奥にあります。
蒴の気孔が沈生か表生かはタチヒダゴケ属の同定に大切で、平凡社の図鑑のタチヒダゴケ属の検索表も、気孔が沈生か表生かから始まっています。
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