写真は、サワギキョウに来ていたキオビツヤハナバチ Ceratina flavipes のメスです。 オスは頭部前面の黄紋がもっと大きくなります。
本種は、ヤマトツヤハナバチとともに、北海道から九州まで広い地域に生息する普通種で、前者が開けた場所、後者が山間部で主に見られるという傾向はあるものの、互いによく似ています。 体の横紋には個体差があり、最も確実な見分け方は・・・
本種の後脚腿節基部下面には長毛房がある(上の写真の赤い楕円で囲った所)のに対し、ヤマトにはこの長毛房がありません。
上から見ると、翅の端が擦り切れています(上の写真)。 本種は年1化性で、夏に新成虫が羽化するのですが、写真の個体は寿命が尽きようとしている昨年の夏に羽化した個体のように思います。
ちなみに、夏に羽化した個体は越冬後、春にノイバラやススキなどの枯れた茎に坑道を掘って育房を作り、新成虫誕生まで巣内で生活します。 ミツバチなどに見られる社会性昆虫の1歩手前の生活環と言えるでしょう。
観察していると、しばらく花のつくりを確認するかのように花の上を歩き回り・・・
スーッと花に潜り込んでいくこともありました(上の写真)。
それにしても、カメラを近づけても逃げようともせず、行動も鈍く、かなり弱っているようです。 上に書いたように寿命が尽きようとする時期でもあるのでしょうが・・・
たくさんのタカラダニにたかられていました。 体液を吸われていることも弱っている理由の1つでしょう。 タカラダニは口吻をハチの体に差し込んでぶら下がり、脚は宙に浮かしています。
下は上の“舞台”となったサワギキョウ Lobelia sessilifolia です。 花期は8月から9月頃で、撮影した日(9月2日)はちょうど花の盛りで、茎の上部には蕾があり、下の方では既に花は終わっています。
サワギキョウの花弁は上下2唇に分かれ、上唇は2裂し、下唇は3裂しています。 オシベ5本はくっつきあって筒状になり(メシベはこの筒の中央にあります)、上唇の間から斜め上に延び、上でカーブして先は斜め下を向いています。 そして、葯から花粉を出すのもメシベの柱頭で受粉するのも、この筒の先で行われます。 つまり、この筒の先に昆虫の背中が触れることによって花粉媒介できるしくみになっています。
下は上の赤い四角で囲った部分の拡大です。
ちょうどキオビツヤハナバチが蜜のある花の基部から出てきているところですが、筒の先とはかなり離れています。 サワギキョウの花はもっと大きなハナバチに花粉媒介してもらえるように進化した花のようです。
最初の写真をもう一度見ていただくと、キオビツヤハナバチは花の外から口吻を差し込み、蜜を盗んでいます。そして4枚目の写真のように、花が期待した正しいルートで蜜のありかに近づいたとしても、上に書いたように花粉媒介は成立しません。 つまりサワギキョウにとっては、キオビツヤハナバチは蜜を盗みに来るだけの存在のようです。
(2020.9.2. 北海道 ウトナイ湖自然観察路)
◎ サワギキョウのもう少し詳しい花のつくりについては、こちらに載せています。 また、キオビツヤハナバチのメスはこちらにも載せています。
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