写真はコツブクチキゴケ Odontoschisma zhui だと思います。 屋久島の標高 700m付近の樹幹についていました(2023.3.8.撮影)。
分子系統学的研究成果を基に2012年から2014年にかけてヤバネゴケ科の大幅な再編成が行われ、本種も Aranda et al.(2014)により新たに記載された種です(片桐・古木,2015)。 したがって、もちろん平凡社の図鑑などには載っていません。 分布は中国と日本(新潟~屋久島)で、従来はクチキゴケと同一視されていたのだと思います。
なお、日本に分布するOdontoschisma(クチキゴケ属)は7種になっています。
上は背面から撮っています。 葉は深く凹んでいます。 葉を含む茎の幅は 0.5~1mmです。
上は腹面から撮っています。 小さな腹葉があり、比較的分かり易い所に名称を入れておきました。 枝は茎の腹面から出ています(赤い円の所)。 大きな葉は弱く鎌状に曲がっています。 緑のラインで示した所は、腹面正面から見ると鎌状に曲がっているのがよく分かる所だったのですが、うまく撮れませんでした。
上は葉です。
上は葉身細胞です。 本種は、特に葉が鎌状に曲がっていない場合は、クチキゴケによく似ていますし、上の細胞の写真も、スケールが無ければクチキゴケの細胞(こちら)によく似ています。 しかし、クチキゴケの葉身細胞が 20~30μmであるのに対し、本種の葉身細胞は 13~18μmで、この細胞のサイズの違いで両者を明瞭に区別することができます。 和名の「コツブ」も、葉身細胞が小さいことにちなんでいます。
上は葉縁近くの細胞の様子です。
上は腹葉の顕微鏡写真です。
今回も道盛さんに文献の存在を教えていただきました。 感謝します。
【参考文献】
片桐知之・古木達郎(2015).日本産タイ類・ツノゴケ類学名情報1.クチキゴケ属Odonto-
schisma.蘚苔類研究11(5).
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