2023-03-29

蒴をつけたフデゴケ

  ヤマトフデゴケかもしれません。 もう少し詳しく調べて書き直す可能性大です(2024.3.15.)。

 あまり蒴をつけないフデゴケ Campylopus umbellatus が蒴をつけていました。 蒴をつけた株は群落内に散見され、それらの1本の茎には1~3本の胞子体がついていました。 平凡社の図鑑には「ふつう1茎に3~4本つき,(以下略)」とありますから、もっとたくさんの蒴をつける群落もあるのでしょう。

 上の写真の茎の長さは6cmあります。 平凡社の図鑑にも本種の茎の長さは6~7cmとありますが、もっと短いものをよく見ます。 やはり十分生長した場合でないと蒴をつけないのでしょう。
 なお、本種によく似たヤマトフデゴケは、こんなに長くなりませんし、胞子体は知られていません。

 茎には密に仮根がついています(上の写真)。

 上は葉のほぼ中央を腹側から見ています。 葉は湿ると縁が持ち上がり、丸くなってきます。 本種の中肋は幅広く、上の写真では大部分が中肋で、葉身細胞は縁に近い所の2~4細胞列しかありません。

 上は葉先です。 平凡社では「(葉の)先端は長い透明な芒となり,(以下略)」と書かれていて、多くの場合はそのようになっているのですが(例えばこちら)、上のように透明な芒にはなっていない場合もあります。 生育環境や時期的なものが関係していると思いますが、私の観察した結果では、乾燥気味の所の方がで透明な芒が発達するように思います。

 上は葉の横断面です。 3断面は同じ葉のもので、上から、葉先から1/4の所、葉の中央、葉先から3/4の所の横断面です。
 平凡社の図鑑には、フデゴケの中肋の横断面については「中央の1列のガイドセルをはさんで背腹両側にステライドが発達し,背側には細胞の突出による明瞭な凹凸がある。」と書かれています。 また、ヤマトフデゴケについては「中部以下の中肋の横断面で,中央部の大形のガイドセルをはさんで腹側に1列の大形で透明な細胞があり,背側にはステライドが発達する。」と書かれています。 上の写真を見ると、葉の上部の横断面はフデゴケの特徴が出ていますが、葉の下部の横断面はヤマトフデゴケの特徴が出ています。 もちろん、葉の下部の横断面でも本種の特徴がはっきり出ている場合もあるのですが(例えばこちら)、生育環境や時期によっては、紛らわしいケースもあるようです。

 上は乾いた状態の本種の胞子体です。 本種の蒴柄は、湿った状態では最初の写真のように強く屈曲しているのですが、乾くと上のようにまっすぐに近くなります。 上の写真の蒴柄の長さは、上のような波打った状態でも 12mmあり、まっすぐにすれば、もっと長くなります。 平凡社では「蒴柄は短く5~6mm」と書かれてあるのですが、屈曲した胞子体の高さが書かれてあるのでしょうか?

 帽は僧帽形で下端に毛があり、蓋には長い嘴がありますが、この蓋は壺の長さよりは短いものです。

 蒴歯の内面は密にパビラで覆われています(上の写真)。 これは本種の属する Campylopus(ツリバリゴケ属)の特徴で、よく似た Bryohumbertia(ツリバリゴケモドキ属)の蒴歯の内面は平滑です。

(2023.3.9. 屋久島)

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