上の写真、少しブレていますが、ヒメタチゴケに囲まれ、マキノゴケの上に広がっているのはコモチイトゴケ科の Wijkia deflexifolia のようです。 上は、屋久島の標高 700mあたりの朽木と言って良いような倒木の上で、強い金属様の光沢に惹かれて撮った写真です(撮影日:2023.3.8.)。
本種に和名はありませんが、珍しいコケではなく、屋久島では標高 1,000mを超えるあたりからは普通に見られるコケのようで、西村ら(2007)の屋久島の蘚苔類目録(蘚苔類研究9(6))にも載せられていますし、中村・須賀(1995)の屋久島の針葉樹林における倒木上のコケ群落の遷移を調査した報文(日本蘚苔類学会会報6(7))には次のように書かれています。
倒木の腐朽の度介いを手がかりとして,以下のような遷移系列がみいだされた.倒伏間もない段階ではクチキハイゴケやタカネハネゴケが優占し,生木の樹幹着生の種も多くみられる,倒木に樹皮がなくなり材が露出するようになるとフクロヤバネゴケ優占の群落がみられる.この群落は,材の腐朽が進むにつれ Wijkia deflexifoIia 優占の群落に取って代わられる.この段階になると草本種の生育もみられる.さらに腐朽が進むにつれハリヒノキゴケ優占の群落に移行し,多くの草本種や木本種も生育するようになる.(ボールドはブログ管理者)平凡社の図鑑等に記載が無いのは、この仲間は分枝系統樹的にも微妙な位置にあり、研究が進んでいないからのようです。 秋山(2019)は新・コケ百選 第19回(蘚苔類研究11(12))で「屋久島には W. deflexifolia とされる種があるが,その正体はよく分かっていない」としています。
上は湿った状態です。
上は乾いた状態です。
茎葉は卵形で、葉先は急に細くなりますが、同じ茎につく葉でも、大きさにも違いがありますし、もっと幅の広い葉や幅の細い葉など、変異があります。 ほぼ全縁で翼部は明瞭に分化しています(上の2枚の写真)。
上は翼部です。 翼細胞は透明(たぶん若い葉)または上のような有色です。
上は葉身細胞です。
上の2枚は枝葉です。 葉の大きさは茎葉とほとんど同じですが、 あまり葉先が細長くならず、葉の上部に小さな歯が見られる場合が多くありました。
上は枝葉の翼部ですが、茎葉とほとんど同じです。
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