岩の崖で育っていたコケ群落(上の写真)、シッポゴケ科のような葉に内外2列の蒴歯を持った蒴、不思議に思って調べたところ、ユミゴケの群落にアカイチイゴケが少し混生していて、蒴はアカイチイゴケのものでした。
以下はユミゴケ Dicranodontium denudatum についての観察結果です。
最初の写真の状態では湿っていましたが、上は乾いた状態です。 平凡社の図鑑などでは、葉が乾くと弓形に曲がり、それが和名の由来であるように書かれています。 しかし、生育環境にもよるのかもしれませんが、今回見た急斜面で育っている姿は、葉は湿っていても弓形に垂れていますし、枝も弓形に曲がっています。
茎の長さは1~2cm、枝分かれは、弓形に曲がった枝の途中から次の枝が上方に出ています。 茎や枝に付く仮根は、最初は白く、次第に褐色になっていくようです。 葉の長さは5~6mmです。
本種の特徴の1つとして、葉が落ちやすいことが挙げられます。 こちらに載せたものでは観察中にも葉がたくさん落ちました。 今回はそのようなことはありませんでしたが、上の写真のように葉がなくなっている所はあちこちに見られました。
上は葉の基部です。 中肋は太く葉鞘部の幅の約1/2を占め、葉身細胞との境は明瞭ではありません。 葉鞘部の縁の細胞は細く薄壁、翼細胞は大きくて薄壁です。
上は葉鞘部からほんの少し上の葉の横断面です(左端が欠けています)。 ガイドセルは明瞭で、ガイドセルの上と下にステライドがあります。 なお、葉の断面で確認すると、葉の中央付近では葉身部の大部分は中肋で占められており、葉の上部では中肋のみになっていました。
上は葉先付近です。 葉先には歯がありますが、葉縁も背面もほぼ平滑です。
上は枝の横断面です。
(2024.5.22. 京都府南丹市 美山)
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