2020-11-10

コモチフタマタゴケの無性芽と大きさを競うコクサリゴケの葉

 樹幹についていた上の写真のコケ、撮っている時はたくさん無性芽をつけたコモチフタマタゴケ Metzgeria temperata だと思っていたのですが、無性芽のように見えたものの中には、かなりのコクサリゴケ Lejeunea ulicina が混じっていました。

 コモチフタマタゴケの無性芽とコクサリゴケの葉の大きさはよく似ています。

 上の写真の上と右がコモチフタマタゴケの無性芽で、左下から中央に伸びているのがコクサリゴケです。 無性芽と葉の大きさは似ていますが、細胞の大きさはかなり異なるようです。

 コクサリゴケはこちらやこちらに載せていますが、以下にもう少し載せておきます。

 上は腹面から撮っています。 背片は離在し、腹片は背片の2/3以上の長さがあり、面積も背片の1/2ほどあります。 腹片の第1歯牙は楕円形の単細胞です。 腹葉は茎の 1.5倍幅で、先端は1/2までV字型に2裂しています。



 上は背面から撮っています。 多くの葉の基部には1個の眼点細胞があります。

 上は葉身細胞です。 トリゴンは小さく、油体は各細胞に2~3個見られます。 平凡社の図鑑では油体は楕円体で微粒の集合とありますが、球体のように見えます。

(2020.11.8. 六甲山)


2020-11-09

チングルマ


 六甲高山植物園でチングルマ Geum pentapetalum が美しく紅葉していました(上の写真:撮影は2020.11.8.)。 チングルマはバラ科の落葉小低木で、北海道から本州の中部地方以北にかけて分布します。

 この機会に過去に撮った写真を載せておきます。

2010.5.16. 六甲高山植物園

 上はチングルマの花です。 花の咲く時期は6~8月と、生育地によって幅があります。

2005.7.10. 北海道大学植物園(札幌市)

 上は果実(痩果)です。 花後、花柱が伸びて上のように放射状に広がります。 基部に種子を抱き込んで長く伸びた花柱には白毛があり、種子散布に役立ちます。
 和名は、上の写真のような状態を子供の風車(かざぐるま)にみたてた稚児車(ちごくるま)が転じて付けられたようです。



2020-11-08

ミノウスバ

  下は Part1の2013.11.12.に載せていた記事を、一部書き換えてこちらに引っ越しさせたものです。

 

 マサキに羽化したミノウスバが群がっていました( 2013.11.8.堺市南区岩室で撮影)。 飛び回ったりはせずに、ほとんどの個体はじっとしたままですが、交尾中のものや産卵中のものなど、いろいろです。 下は交尾しようとしているオスとメスです。

 メスの触角は線状ですが、オスの触角はメスのフェロモンを受けるためでしょうか、発達して櫛歯状になっています。 ということは、活動は視覚に頼らず、主に夜ということになるのでしょうね。
 オスもメスも翅は黒い色がついていますが透けていて、体は鮮やかなオレンジ色と黒の目立つ色をしています。 まるで警戒色のようですが、毒は持っていません。 この色は生態的にどのような意味を持っているのでしょうか。
 ちなみに、ミノウスバは漢字では「蓑薄翅蛾」と表されています。 この「蓑(みの)」は体を覆っている長い毛を指し、「薄翅」は翅の透明なところからだと思われます。

 上は産卵中のメスです。 卵はマサキやコマユミ、マユミなど、幼虫の食餌植物であるニシキギ科の木の枝に産み付けられます。

 産み付けられた卵を拡大してみました(上の写真)。 卵は毛にまぶされたようになっています。 この毛は成虫の体に生えていたものでしょう。
 この毛は卵を守るのに役立っているのでしょう。 この密度ほんとうに守ることに役立っているのかと思われますが、寄生蜂などは少しでも毛に触れると産卵を躊躇する場合が多いようです。
 成虫の体の背面の毛をどのように卵の方に持っていくのかも不思議です。 2枚目の写真の個体は毛が少なくなっているようですが、このような行動の過程で毛が腹部の端に集められるのでしょうか。

 上はオスですが、尻を上げているのはカメラを近づけたための威嚇姿勢だと思うのですが、上にも書いたように、黒い毛に毒があるわけではありません。 毛だけで鳥などの敵に対して有効なのでしょうか。

 産み付けられた卵は、このまま冬を越し、春に孵化します。 若齢幼虫には、外敵に攻撃された時に不快な味のする防御液を分泌する腺があり、集団で生活しますが、その後分散していきます。

 上は 2012年の5月中旬にニシキギにいた幼虫を撮ったものです。 たぶん終齢幼虫だと思います。 この木にはたくさんの幼虫がいたので、ここにもたくさん成虫がいるだろうと確かめに行ったのですが、成虫の姿は全くありませんでした。 たくさんいた幼虫は鳥などの犠牲になってしまったのでしょうか。

 幼虫はその後石の下などで繭を作って夏を過ごします。







2020-11-07

スッポンタケ科のきのこたち

  スッポンタケ科のきのこは担子菌類に分類されています。 担子菌類の多くは、いわゆる「普通のきのこ」で、傘の下から出る胞子は空気の動きによって飛散されます。 ところがスッポンタケ科のきのこはハエに胞子を運んでもらいます。 胞子のある粘液部分(グレバ)はハエの好む、つまり人にとってはいやなにおいを出しますが、おもしろい形をしたきのこを作る種が多く、たのしめます。
 今回はいろいろなスッポンタケ科のきのこを集めてみました。

● シラタマタケ属(Kobayasia)
 土中に半分埋もれる白色の卵形(白玉)で、胞子の拡散は自然に崩壊するか、スズメバチなどが食用にすることで運ばれます。
 内部は暗オリーブ色のグレバが、ひもが折り畳まれたようになって詰まっていて、その間は透明なゼラチン質によって埋めています(下の写真)。

シラタマタケ K. nipponica の内部 2010.9.11.堺市南区 新檜尾公園

● キツネノロウソク属(Mutinus)
 白い球形の「卵」(下の写真では土中で見えない)から托を伸ばし、托の上部にグレバをつけます。

キツネノエフデ M. bambusinus 2020.10.18.京都府木津川市加茂町

 上は古いキツネノエフデのグレバを舐めるヒゲナガヤチバエ Sepedon aenescens です(2008.10.25.堺自然ふれあいの森)。

● スッポンタケ属(Phallus)

スッポンタケ P. impudicus 2013.10.21.金剛山

 スッポンタケは托の上部に開くことのない傘があり、その表面にグレバをつけます。 スッポンタケ科のなかでは最も一般的なきのこです。 本種はこちらにも載せています。

キヌガサタケ P. indusiatus 2001.7.14.河内長野市 烏帽子形公園

 キヌガサタケはスッポンタケと同じ属で、托の上部にある傘がほんの少し開き、そこからレースのような菌網(indusium)が伸びてきます。

● サンコタケ属(Pseudocolus)
 托の頂部に腕が形成されますが、腕の先端はくっついたままです。 グレバは腕の内面側に作られます。

サンコタケ Pseudocolus fusiformis 2020.7.22.箕面公園

 サンコタケはこちらにも載せています。 ちなみに和名の「サンコ」は仏具の三鈷(さんこ)の形に似ていることに由来します。

● アカイカタケ属(Aseroe)
 托の頂部にたくさんの腕が形成され、放射状に展開し、グレバはその中央の盤状部にできます。 日本でいちばんよく見られる(といっても珍しいですが・・)のはイカタケ A. arachnoidea ですが、分類学的検討は遅れていて、複数種がある可能性も、逆にアカイカタケ A. rubra の異名として扱う意見もあるようです。

イカタケ(右)とその幼菌(左) 撮影:山本理恵さん

イカタケ 撮影:橋本敬子さん

 上の2枚は 2020.11.3.に堺自然ふれあいの森で撮影されたもので、コケの観察会で偶然にみつかりました。

アカイカタケ 1998.12.28.ボルネオ

 アカイカタケは盤状部が深赤色を呈するという色の違いだけではなく、盤状部がイカタケより広くなっています。







2020-11-06

ヒラモ

 

 京都府立植物園にあったヒラモ Vallisneria natans var. higoensis です(2020.9.29.撮影)。 学名にあるように、セキショウモの変種とされています。 セキショウモもあまり見かけなくなってきましたが、ヒラモの自然分布は熊本県に限られていて、環境省のレッドリストで絶滅危惧(2)類に分類されています。
 沈水性の水草で、雌雄異株です。 雌花は細長い花茎の先につき、水面に浮いて咲きます。 ちなみに、雄花は水中の花茎から離れて水面に浮かびます。 受粉は水面を漂う花粉が雌花に届くことで成立するという水媒花です。

 受粉が成立した花は、長い花茎がコイル状に巻いて縮むことで水中に引き込まれ、細長い果実に育ちます。

 上は若い雌花です。 ガク片は3、花弁は無く、柱頭は3個で、それぞれが2裂しています。 花茎の先にある苞鞘は子房の多くの部分を包んでいます。