スッポンタケ科のきのこは担子菌類に分類されています。 担子菌類の多くは、いわゆる「普通のきのこ」で、傘の下から出る胞子は空気の動きによって飛散されます。 ところがスッポンタケ科のきのこはハエに胞子を運んでもらいます。 胞子のある粘液部分(グレバ)はハエの好む、つまり人にとってはいやなにおいを出しますが、おもしろい形をしたきのこを作る種が多く、たのしめます。
今回はいろいろなスッポンタケ科のきのこを集めてみました。
● シラタマタケ属(Kobayasia)
土中に半分埋もれる白色の卵形(白玉)で、胞子の拡散は自然に崩壊するか、スズメバチなどが食用にすることで運ばれます。
内部は暗オリーブ色のグレバが、ひもが折り畳まれたようになって詰まっていて、その間は透明なゼラチン質によって埋めています(下の写真)。
シラタマタケ K. nipponica の内部 2010.9.11.堺市南区 新檜尾公園 |
● キツネノロウソク属(Mutinus)
白い球形の「卵」(下の写真では土中で見えない)から托を伸ばし、托の上部にグレバをつけます。
キツネノエフデ M. bambusinus 2020.10.18.京都府木津川市加茂町 |
上は古いキツネノエフデのグレバを舐めるヒゲナガヤチバエ Sepedon aenescens です(2008.10.25.堺自然ふれあいの森)。
● スッポンタケ属(Phallus)
スッポンタケ P. impudicus 2013.10.21.金剛山 |
スッポンタケは托の上部に開くことのない傘があり、その表面にグレバをつけます。 スッポンタケ科のなかでは最も一般的なきのこです。 本種はこちらにも載せています。
キヌガサタケ P. indusiatus 2001.7.14.河内長野市 烏帽子形公園 |
キヌガサタケはスッポンタケと同じ属で、托の上部にある傘がほんの少し開き、そこからレースのような菌網(indusium)が伸びてきます。
● サンコタケ属(Pseudocolus)
托の頂部に腕が形成されますが、腕の先端はくっついたままです。 グレバは腕の内面側に作られます。
サンコタケ Pseudocolus fusiformis 2020.7.22.箕面公園 |
サンコタケはこちらにも載せています。 ちなみに和名の「サンコ」は仏具の三鈷(さんこ)の形に似ていることに由来します。
● アカイカタケ属(Aseroe)
托の頂部にたくさんの腕が形成され、放射状に展開し、グレバはその中央の盤状部にできます。 日本でいちばんよく見られる(といっても珍しいですが・・)のはイカタケ A. arachnoidea ですが、分類学的検討は遅れていて、複数種がある可能性も、逆にアカイカタケ A. rubra の異名として扱う意見もあるようです。
イカタケ(右)とその幼菌(左) 撮影:山本理恵さん |
イカタケ 撮影:橋本敬子さん |
上の2枚は 2020.11.3.に堺自然ふれあいの森で撮影されたもので、コケの観察会で偶然にみつかりました。
アカイカタケ 1998.12.28.ボルネオ |
アカイカタケは盤状部が深赤色を呈するという色の違いだけではなく、盤状部がイカタケより広くなっています。
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