2016-01-03
スナジホウオウゴケ
上の写真の赤い矢印の所にホウオウゴケがついています。 近寄って拡大すると・・・
蒴の観察にはちょうどいい時期で、帽をかぶったものから蓋が取れて蒴歯が見えているものまで揃っています。 蒴は曲がらず直立してついています。
生えている所は、川の増水時に運ばれてきたと思われるシルトがべっとり張り付いた石の上です。
蒴は常に頂生しており、蒴の形はほぼ相称です。 小さなホウオウゴケで調べるのに苦労しましたが、以下の特徴も含めて平凡社の図鑑の検索表を使ってたどっていくと、スナジホウオウゴケ( Fissidens bryoides var. esquirolii )に落ちました。
これくらいの大きさになると、深度合成でもしない限り斜めから撮った全体にピントを合わせるのは無理で、上の写真では葉にピントを合わせています。
ホウオウゴケの仲間は、葉が左右に規則正しく並んでいるのが特徴です。 しかし上の写真では、茎の下部では葉が重なり合ったようになって厚みがあります。 じつはスナジホウオウゴケでは、蒴をつける枝、雄の枝、生殖器官をつけない枝が、基部でいっしょになっています。
下は別の植物体でこの3種類の枝を実体顕微鏡下で分離したものですが、いちばん小さな枝は分離時に紛失してしまいました。
上の目盛は1目盛が0.1mmです。 上の写真のものでは蒴は0.5mm、蒴柄は約2mm、葉は胞子体に近いものでは1mmほどと長いのですが、他の葉は長いものでも0.5mmほどです。 また胞子体をつけている枝とそうでない枝では、枝の太さは異なるようです。
上は偏光顕微鏡像です。 舷は弱いですが、ほぼ全周で見られます。 葉の先は鋭頭です。
ホウオウゴケ科は日本では40種あまりが知られています。 規則的に左右2列に並ぶ葉の様子などからホウオウゴケ科であることはすぐに分かっても、ホウオウゴケ科はみんなそのような特徴を持っている、つまり似ているわけで、上に載せたような微小な種も多く、同定はなかなか大変です。
(2015.12.27. 堺自然ふれあいの森)