2017-03-24

クビレズタ(海ぶどう)



 沖縄県や鹿児島県などで売られている海ぶどうについては、「そよ風に乗って」の2009年04月10日の記事にしています(こちら)。
 この海ぶどう(またはグリーンキャビア)として売られている海藻は、上の記事にも書いていますが、和名クビレズタ Caulerpa lentillifera というイワズタ科に分類されている緑藻です。 和名の意味は「くびれているツタ」ですが、1986年に内閣告示として公布された「現代仮名遣い」では「ヅ」は「ズ」と書くことを基本とされ、「クビレヅタ」ではなくなりました。

 ところで、1月10日に『コケの生物学』という本が出版されました。 この本では、生物学の視点から、コケに関することを総合的に解説されているのですが、その第1章では陸上に上がったコケと水中に留まっている緑藻との関係が論じられています。 その中で、クビレズタと同属であるイワズタなどは、植物体も大きく、一見体制がかなり複雑であるが、多核性の糸状体が複雑に絡んで出来上がった、見かけ上の複雑さに過ぎない、とされています。
 このことを確認するために、クビレズタを顕微鏡で調べてみました。


 上は葉に相当する位置にある“柄”付きの球形部分です。 「クビレ」とはこの“柄”の様子からですが、それはさておき、もし細胞壁で仕切られた細胞があれば、それがはっきり見えるはずの倍率ですが、球の表面にゴミのような模様が見えるだけです。
 下はこのゴミのような模様を拡大したものです。


 緑色のものは葉緑体だと思うのですが、紅色のものは何なんでしょうね。


 上は茎のような部分の縦断面を作って顕微鏡で見たものですが、糸状のものが見えるだけです。
 細胞質は透明に近いものですから、染色すると何か分かるかもしれませんが、ここで言えることは、クビレズタは、コケ植物や種子植物に見られるような細胞壁で仕切られた細胞がたくさん集まった体ではない、ということくらいでしょうか。
 生食すると、ブチッという歯ごたえの後に海水をマイルドにしたような味がしますから、植物体の表面は丈夫で、内部は海水の成分に近い液体で満たされているのでしょう。


 上記『コケの生物学』についてもう少し書いておきます。 この本の著者は北川尚史博士で、シダとコケ談話会の編集となっています。 北川博士は 2016年1月にご逝去されているのですが、博士が雑誌『植物の自然誌 プランタ』で連載されていた内容が、連載終了から既に20年以上経っているにも関わらず古びたところがなく、このまま埋もれさせてしまうにはあまりにも惜しいと、“北川節”を活かしつつ、その後の研究などで明らかになった点など最小限の手を加えて書籍化されたものです。


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