2017-11-02

ヒナノヒガサ


 ススキゴケカガミゴケなどのコケ群落から伸び出したヒナノヒガサ Rickenella fibula です。
 蘚苔類と菌類の関係は、苔類やツノゴケ類は菌類と共生していることが知られています。 これらは菌根様の構造を作るなどして絡み合い、コケは菌類に光合成で作った糖などを与え、菌類はコケの仮根などよりずっと細い菌糸を広く張り巡らせて土壌から集めた無機塩類などをコケに提供しています。 ところが蘚類に関しては、菌類との共生関係は知られていません。 ヒナノヒガサも、コケ植物に寄生する菌類とされています。 見えない所でヒナノヒガサと蘚類がどのような関係になっているのか、観察してみました。


 柄の基部周辺にあるのはススキゴケとカガミゴケの古くなった部分でした。


 上はヒナノヒガサの柄の周囲にあったススキゴケです。 ススキゴケは常緑の多年生で、上の写真には3年分が写っているのではないでしょうか。 この褐色になった部分は密に絡み合っていました。


 上はカガミゴケです。 写真では上から下に伸びている茎を中心に、このコケも絡み合っていました。


 上はヒナノヒガサの柄の基部で、白い菌糸が見えますが、見えているのは菌糸が寄り集まった部分で、1本の菌糸はとても細く、菌糸がコケの組織内に入っているのか否かは確かめようもありません。

 ところで、ヒナノヒガサの傘や柄の表面を拡大して見ると・・・




 微毛がたくさん見えます。 これはシスチジアと呼ばれているものでしょう。 シスチジアは不稔性の異型細胞で、通常は肉眼で確認するのは困難ですが、ヒナノヒガサなどの一部の種では、肉眼でもどうにか見えるほどの大きなシスチジアを持っているとのことです。

(2017.11.1. 堺自然ふれあいの森)