7月に見た高地性の“スゲ”3種です。
● ミタケスゲ
ミタケスゲ Carex dolichocarpa は寒冷地の湿地に生えるスゲです。 上は秋田県の標高 1,100mほどの湿原で、2021.7.9.に撮影しました。
スゲ属は雄花と雌花が別になっていて、雌花は、メシベが果包(かほう)という袋に包まれているのが特徴ですが、本種はこの果胞がとても長く、鋭く尖っているのが特徴です。 上の写真では受粉のため、メシベが果胞から伸び出しています。
● ワタスゲ
上はワタスゲ Eriophorum vaginatum です。 北海道から中部地方以北の高山帯から亜高山帯の高層湿原に分布します。 上は秋田県の標高 1,100mほどの高層湿原で、2021.7.9.に撮影しました。
本種は和名に「スゲ」とついていますが、スゲ属(Carex)ではありません。 スゲ属の花は風媒花として虫を呼ぶ必要が無いため、花被片(花弁やガク片)は完全に退化消失しています。 しかし本種には、退化して開花時には目立たないものの、花被片があります。 この花被片は、果実が成熟する頃には長く伸び出して綿毛となり、タンポポ同様、種子散布に役立ちます。 上の写真は雨の後で、綿毛が濡れてフワフワの状態ではないのが残念です。
● タカネクロスゲ
タカネクロスゲ Scirpus maximowiczii は高山の湿地に生える多年草で、環境省の絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。 上は 2021.7.16.に長野県の八方池近く(標高約 2,100m)で撮りました。
本種もスゲ属(Carex)ではなく、ホタルイやカンガレイなどと同じホタルイ属(Scirpus)で、もちろん果胞は無く、黒っぽい苞の上にたくさんの小穂をつけます。
風媒花ですので虫を呼ぶための美しい花被片はありませんが、黒っぽい鱗片の間から白っぽいメシベや赤茶色のオシベが顔を出していて、よく見るとなかなかの美しさだと思います。
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