2023-07-21

ムジナモ

 牧野富太郎博士の人生をモデルとしたNHK連続テレビ小説「らんまん」、7月24日からの第17週は「ムジナモ」ですが、上がそのムジナモ Aldrovanda vesiculosa です。
 本種はユーラシア大陸やアフリカに分布していましたが、生育できる条件が限られており、自生地の多くで水質汚濁や埋め立てなどで絶滅しています。
 日本では江戸川河川敷の用水池で牧野富太郎が発見し、彼が描いた花の解剖図は、開花が見られなかったヨーロッパにおいて文献に引用され、牧野の名を世界に広める事になりました。 その後、日本各地で自生地が見つかりましたが、やはり魚やアメリカザリガニなどによる食害や水質汚染などで多くの自生地で絶滅しています。 幸いにも栽培に成功していた個体があり、種としての絶滅は免れており、各地で育てられています。

 本種は浮遊性の水草で、根は発芽時に幼根がみられるだけです。 茎の各節に捕虫葉が輪生し、全体の姿は円柱形をしています。
 牧野はその姿をタヌキの尻尾にたとえようとしましたが、既にタヌキモという植物があったため、タヌキの別名であるムジナから「ムジナモ」と名付けられたようです。

 上は茎の1節を切り取り、輪生している捕虫葉の様子を撮った写真です。 捕虫葉は葉柄の先に二つ折れになった葉身がついています。 葉身は横向きに開いていますが、開いている向きは、どの葉も同じです。

 上に書いたように葉身は二つ折れになっていて、左右の葉身で挟まれた部分はふっくらと膨れています。 その膨らみに虫が入ってきて感覚毛に触れると、素早く葉が閉じて虫を閉じ込め、消化します。 その膨らみを葉身部分の横断面を作って示そうとしたのですが、葉身部分は薄く(1層の細胞?)、牧野の図にあるような写真は撮れませんでした。 また、今回撮影したムジナモでは、殆どの葉が既に閉じていました。 撮影のために容器を入れ替えたり手で触ったりしたことが刺激になってしまったのでしょうか。
 主脈の左右の葉身部分はそれぞれ主脈に近い部分(a)が葉縁に近い部分(b)より少し厚くなっていて、aとbの境は上の写真のようにはっきりしています。 写真の中央の葉では左右の葉身がほとんど重なっていますが、写真の下の葉では少しずれていて、①と③が手前の葉身、②と④が奥の葉身です。

 閉じた葉の内側を観察しようとしたのですが、開いた葉の状態のプレパラートを作成することは困難で、しかたなく破った葉の断片を観察しました。

 上は感覚毛で、左端の色の濃い部分は主脈です。 上にも粒の集合体のようなものが少し写っていますが・・・

 上の粒の集合体のようなものが葉身の中央付近にたくさん見られました。 牧野のムジナモの図にも描かれているのですが、この図の説明が入手できていません。 消化酵素が入っているのでしょうか?

 葉縁には内向きの刺状の歯が並んでいます(上の写真)。 捕らえた虫が逃げられないようにしているのでしょうか。
 上の写真の中央左下には染色体のような形をしたものが写っています。 これも牧野の図に描かれているのですが、どのような働きをしているものなのか、分かりません。

 上の写真の中央左は染色体のような形をしたものと同じでしょう。 右の楕円が二つつながったようなものもたくさんありました。 これも牧野の図にも描かれていますから、ゴミや微生物などではなく、ムジナモの葉に特有の何かでしょう。

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