2020-12-15

クロスジフユエダシャクはいつ交尾するのか

下は Part1の 2013.12.7.からの引っ越し記事です。

 クロスジフユエダシャクはメスの翅が退化した冬尺の一種です。(冬尺についてはこちらに書いています。) 「堺自然ふれあいの森」の一角に、毎年たくさんのクロスジフユエダシャクのオスが飛び回る場所があります。(3年前の様子はこちらに載せています。) この場所の様子を記録しておこうと、シャッター速度を速めて蛾の動きを止めて撮ると、写真から蛾を探すのが難しくなります。 上の写真は、あえて飛んでいる蛾がブレて写るようにして撮ったもので、赤い円の所にクロスジフユエダシャクがいます(撮影:2013.12.3.)。
 毎年たくさんのクロスジフユエダシャクが飛び回るということは、この付近でたくさんの交尾や産卵が行われているということでしょう。
 クロスジフユエダシャクの交尾は、別の場所で写真に撮っています(こちら)。 しかし、オスとメスの個体数の比率や、交尾に至る過程や時間帯など、知りたいことはたくさんあります。
 クロスジフユエダシャクは、昼行性ですが、交尾は夕方から日没後に行われると聞き、2013.12.5.の午後4時前から5時過ぎまで、観察してみました。 場所は1枚目の写真と同じ所です。
 陽がかげると、飛んでいるオスは少なくなり、休憩モードのオスが増えてきました。 私が歩くと足元から次々と飛び立ちますが、積極的にメスを探している個体は少ないようです。
 そんな中で、あるオスが、高さ数センチのササの一点にこだわって、タッチアンドゴーを繰り返していました。 すると、その一点から何かがポトリ、近寄ってみると、メスでした(下の写真)。

 たぶん、フェロモンでササの上部のメスの存在を知ったオスが交尾しようとしたものの、うまくいかず、その振動でメスが落ちてしまったのではないかと思います。
 他にもササに上っているメスがいるのではないか、もしかしたら、もう既に交尾しているものもいるのではないかと、探してみましたが、他にメスは見つけられませんでした。 そのうちに次々と、飛んでいたオスが地上の枯葉や低いササなどに止まり、すぐに動かなくなっていきました。 眠りに入ったような現象です。 動かなくなった証拠に、とまっていた枯葉ごと持ち上げ、近接撮影でフラッシュの光を当てたのが下の写真です。(瞼が無いので、こちらをにらんでいるようにも見えますが・・・。) こんなことをしても全く動きません。 複数のオスで確かめましたが、みんな同じ状況でした。

 動きが止まってしまったので仕方なく帰宅したのですが、こうなると交尾の中心は夕方から日没後だというのも怪しくなります。 また、少なくともこの時期のこの場所では、メスの個体数は、オスに比較して、かなり少ないように思います。



2020-12-14

チャケビラゴケ

 

 樹皮に張り付いて育っていた写真のコケ、腹面から見ると・・・

 腹面から見ると、背片と腹片の間から、たくさんの尾状枝が出ています。 チャケビラゴケ Radula brunnea です。

 上のような花被をつけた枝もありました。 花被はヘラ型で、花被をつけた枝には尾状枝は見られませんでした。

 背片は重なっていますし、先が内曲しているので、上の写真から正確に測定するのは困難ですが、長さは1~1.1mmです。

 上は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、各細胞には大きな油体が1つあります。

(2020.11.26. 奈良県 上北山村)

◎ チャケビラゴケはこちらにも載せています。


2020-12-12

エゾノコブゴケ

 

 傾きかけた陽を浴びて美しく光るコケ群落、このコケは・・・

 蒴は帽にすっぽり包まれていて若く、直立のまま成熟するのか、成熟するにつれて傾くのかも分かりません。 葉は明るい黄緑色で細く、みごとに縮れています。

 湿らせても葉は真っ直ぐにはなりにくいようです。 葉の長さは5~7mmです。
 葉の細い直立性蘚類も多くあります。 何科のコケなのか分からないまま、葉の観察を続けます。

 茎から葉を剥がしてみました(上の写真)。 葉には明瞭な葉鞘部(茎を取り巻いている部分)があり、葉身部は肩から折れ曲がるように強く反っています。

 葉先付近には歯があります(上の写真)。

 上は葉先から少し下を背面から撮っています。 中肋の所々の細胞にパピラが見られます。

 上は肩の部分を斜め上から見ています。 肩は幅広く、葉身細胞の観察も容易だと思い倍率を上げたのが下の写真です(角度は少し変わっています)。

 葉身細胞は丸みのある方形~矩形で、パピラなどは見られません。 このような葉身細胞はシッポゴケ科によく見られます。 シッポゴケ科でこのように細長くよく縮れる葉で、まず思いつくのはチヂミバコブゴケですが、それよりもかなり大型です。
 チヂミバコブゴケに近縁のものを調べてみると、エゾノコブゴケが上記の観察結果にほぼ一致しそうです。 この種にも蒴の基部にこぶ状の突起があるのですが、蒴は2枚目の写真のように細く完全に帽に覆われている状態です。 そこで・・・

 試しに帽をそっと引っ張ってみると、うまく蒴を引き抜くことができました。 こんな細い状態の蒴でも立派なこぶ状の突起がついています(上の写真)。
 これで決定、写真のコケはエゾノコブゴケ Onchophorus wahlenbergii でした。

(2020.11.26. 奈良県 上北山村)

◎ エゾノコブゴケはこちらにも載せています。


2020-12-11

蒴をつけたナガエノスナゴケ

 

 岩上を覆うように育っていたナガエノスナゴケ Dilutineuron canaliculatum が蒴をつけていました。 葉には光沢がありません。

 茎は這った後に斜上しているのですが、上は立ち上がった部分を撮った写真です。 乾いた状態で、葉は茎に寄っています。 採集後12日経過してから撮影しましたので蒴にしわが生じています。

 上は湿らせた状態ですが、蒴は水を吸って膨れてはくれませんでした。 葉の長さは3~4mm、蒴柄の長さは1cm前後です。


 葉は卵状披針形で、上部は狭まり、長く伸びています(上の写真)。 葉の基部には皺ができています。

 葉先は、微鋸歯状か、上の写真のようにわずかに鶏冠(とさか)状になっています(上の写真)。

 上は葉先から少し中央部へ寄った所です。 葉の先端部は上の写真のように半管状になっています。 丸く見えているのはパピラです。 細胞壁上に大きなパピラがきっしりあるため、どこまでが1つの細胞なのか、ほとんど分かりません。

 上は葉の基部です。 波状に肥厚した縦壁を持つ細胞が並んでいます。

(2020.11.26. 奈良県 上北山村)

◎ ナガエノスナゴケはこちらにも載せています。 またこちらには本種の造精器を載せています。


2020-12-09

イボヤマトイタチゴケ

 

 写真はイボヤマトイタチゴケ Leucodon atrovirens でしょう。 樹幹に着生していましたが、イタチゴケよりずいぶん大きいなと思いました。 関東以西に分布するようです。

 基物上を這っている一次茎は細く、そこから二次茎が斜上します。

 上は乾いた状態です。二次茎の長さはときに 10cm近くに達するようです。 蒴柄の長さは1cmほどです。

 上は湿った状態です。 葉の長さは2~3mmです。

 上は二次茎の横断面で、中心束がありません。 中心束の有無は Leucodon(イタチゴケ属)を見分ける際のポイントの1つで、イタチゴケなどには中心束があります。

 葉は楕円状卵形で、深い縦じわがあります(上の写真)。 中肋はありません。 翼部の細胞(黒っぽく見えている)が占めているのは葉長の1/3以下です。

 翼部の細胞は方形なのですが、細胞壁が厚く厚角ぎみで、細胞間の境がはっきりしないため、楕円形~ゆがんだ平行四辺形のように見えます(上の写真)。

 上は帽の取れた蒴です。(帽のついている様子は最初の写真を見てください。) 平凡社の図鑑には「前蒴歯はよく発達する。」とあるのですが、この「前蒴歯」というものが何なのか、よく分かりません。 関係があるのかないのかもわかりませんが、上の写真の水色で囲った部分には格子状の構造が見られます。

 イタチゴケなどの蒴柄は平滑ですが、本種の蒴柄にはパピラがあります(上の写真)。 和名の「イボ」はこのパピラに由来するのだと思います。

 上は蒴の外側から撮った写真で、内蒴歯は低い基底膜のみですので、主に外蒴歯が写っています。 外蒴歯は節くれていて、全体にパピラがあります。 一般に外蒴歯には褐色系の色がついている種が多いのですが、本種の外蒴歯は白く、顕微鏡で見ると透明感があります。 学名の属名は「白い歯」という意味で、この外蒴歯の色に由来しているのだろうと思います。

 一部には上のように格子状になっている外蒴歯も見られました。

 上は胞子です。 胞子としてはかなり大きなものですが、これは胞子内で発芽しているためのようです。 上はまだ蓋が固くくっついている蒴から取り出した胞子で、飛散される胞子はもっと大きいのかもしれません。 平凡社の図鑑では胞子の大きさは径 42~84μmとなっています。

(2020.11.26. 奈良県 上北山村)

◎ イボヤマトイタチゴケと思われるコケはこちらにも載せています。