写真はイボヤマトイタチゴケ Leucodon atrovirens でしょう。 樹幹に着生していましたが、イタチゴケよりずいぶん大きいなと思いました。 関東以西に分布するようです。
基物上を這っている一次茎は細く、そこから二次茎が斜上します。
上は乾いた状態です。二次茎の長さはときに 10cm近くに達するようです。 蒴柄の長さは1cmほどです。
上は湿った状態です。 葉の長さは2~3mmです。
上は二次茎の横断面で、中心束がありません。 中心束の有無は Leucodon(イタチゴケ属)を見分ける際のポイントの1つで、イタチゴケなどには中心束があります。
葉は楕円状卵形で、深い縦じわがあります(上の写真)。 中肋はありません。 翼部の細胞(黒っぽく見えている)が占めているのは葉長の1/3以下です。
翼部の細胞は方形なのですが、細胞壁が厚く厚角ぎみで、細胞間の境がはっきりしないため、楕円形~ゆがんだ平行四辺形のように見えます(上の写真)。
上は帽の取れた蒴です。(帽のついている様子は最初の写真を見てください。) 平凡社の図鑑には「前蒴歯はよく発達する。」とあるのですが、この「前蒴歯」というものが何なのか、よく分かりません。 関係があるのかないのかもわかりませんが、上の写真の水色で囲った部分には格子状の構造が見られます。
イタチゴケなどの蒴柄は平滑ですが、本種の蒴柄にはパピラがあります(上の写真)。 和名の「イボ」はこのパピラに由来するのだと思います。
上は蒴の外側から撮った写真で、内蒴歯は低い基底膜のみですので、主に外蒴歯が写っています。 外蒴歯は節くれていて、全体にパピラがあります。 一般に外蒴歯には褐色系の色がついている種が多いのですが、本種の外蒴歯は白く、顕微鏡で見ると透明感があります。 学名の属名は「白い歯」という意味で、この外蒴歯の色に由来しているのだろうと思います。
一部には上のように格子状になっている外蒴歯も見られました。
上は胞子です。 胞子としてはかなり大きなものですが、これは胞子内で発芽しているためのようです。 上はまだ蓋が固くくっついている蒴から取り出した胞子で、飛散される胞子はもっと大きいのかもしれません。 平凡社の図鑑では胞子の大きさは径 42~84μmとなっています。
(2020.11.26. 奈良県 上北山村)
◎ イボヤマトイタチゴケと思われるコケはこちらにも載せています。
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