冬虫夏草とは、語源的には冬は虫の姿で夏は植物の姿になる生物を言うのでしょう。 植物らしいものを掘り起こしてみれば、虫の姿に続いていた、ということでしょうが、実際には真菌が虫の体に入り込み、虫の体を養分にしてキノコをつくるというものです(例えばカメムシタケ)。 ですから虫の種類によっては“冬草夏虫”とも成りうるわけですし、いつも虫の体は土の中とも限りません。
地際の垂れ下がった(たぶんシロヤマギクの)葉の裏で、上の写真のようなものを見つけました。 冬虫夏草のアリタケの一種だと思います。
犠牲になっている蟻はチクシトゲアリのようです。 蟻の体に入り込んで育った菌糸は蟻の体の外にまではみ出ていますし、頭部と胸部の境からは子実体が育っています。
「 livescience 」の研究解説記事に「 How Zombie Ants Lose Their Minds 」というのがあります。 アリタケをつくるある種の真菌は蟻の行動を支配し、胞子散布に都合のいい場所で蟻に葉の主脈を噛ませ、蟻の体を固定するようです。 眠る時に蜂が葉などを噛んで体を固定することが知られていますが、蟻も蜂であり、それと似たことを、真菌に支配されてゾンビとなった蟻が行うということなのでしょう。 動かなくなった蟻はその場で死に、真菌は胞子を散布します。
下は1枚目の写真と同じものを、少し角度を変えて撮ったものです。 口の周辺は菌糸に隠されてよく分かりませんが、位置関係からすると、蟻の体はちょうど葉の主脈の上にあり、蟻が主脈を噛んでいても不思議はありません。 上記と同じことが起こっているのかもしれません。
(2014.12.5. 堺自然ふれあいの森)
0 件のコメント:
コメントを投稿