アリヅカコオロギはアリの巣に居候するコオロギの仲間です。 下に書くように生態的にはおもしろいのですが、体長が数mmですので、博物館などでは巨大な模型で展示されたりしています。 そんな模型は何度か見たことはありましたが、本物は、見たいと思いつつも、これまで見たことはありませんでした。 展示されている模型では、土の中のアリの巣の部屋に住んでいることになっていて(実際そうでしょう)、土を掘り返さないと見ることはできないと思っていました。
最近、このアリヅカコオロギ(だけではありませんが)について書かれている本が出版されました。 東海大学出版部発行の「フィールドの生物学⑭ 裏山の奇人-野にたゆたう博物学-」で、裏山で発見した虫の生態などについて書かれてある本ですか、著者の小松貴氏は好蟻性生物(生存の全てをアリに依存している生物)の研究者で、主要な研究対象はアリヅカコオロギです。
この本によれば、アリヅカコオロギは石をひっくり返すといるということでした。 つまり、石を天井にしているアリの部屋にいるアリヅカコオロギを見ることができるということでしょう。
アリの巣に勝手に侵入し、アリのにおいを剥ぎ取って自らの体表につけることでアリの攻撃を防ぎ、アリから餌を盗みながら生きるというアリヅカコオロギをぜひ見たいものと、私も石を裏返しはじめましたが、最初はどんな環境にあるどのような大きさの石を裏返したらいいのか、なかなか分かりませんでした。 そしてやっと見つけたのが、下の写真のアリヅカコオロギです。 体長は3mmほどでした。
アリヅカコオロギは土の中で生活するので、翅は退化・消失しています。 体の後端には、コオロギの仲間らしく、1対の太い尾肢が見えます。
小松貴氏の研究によれば、日本産アリヅカコオロギ属には多くの種があり、種ごとに好んで寄生するアリ種が決まっており、また決まった生息環境の好みを持つ種がいるということです。 上の写真のアリヅカコオロギがいたアリの巣は、たぶんクロヤマアリだったと思うのですが、はっきりしません。 というのは、逃げようとするアリヅカコオロギを撮るのに精いっぱいで、気がつけばアリは全部巣の奥に逃げ込んでしまっていました。
事前の予備知識では、アリヅカコオロギは発達した後脚でジャンプして逃げるものと思っていました。 ところがこのアリヅカコオロギは走りまわるばかりで、跳ねることはしませんでした(だから写真が撮れたのですが・・・)。 後から写真を見て、その理由が分かりました。 写真のアリヅカコオロギは左の後脚を失っていました。
下は残っていた後脚の拡大です。 発達したトゲが見えますが、小松貴氏によれば、体はとても軟弱で、手づかみにすると簡単につぶれて死ぬそうです。
(2014.11.24. 槇尾山)
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