2016-01-15

ヒメコバチ科 Eulophus abdominalis の蛹


 アラカシの葉の裏で、上の写真のようなものをみつけました。 赤と黒の小さな猫のようにも見えるものが輪になって少し背中を丸め、それぞれの目の前に置かれたお団子を見つめているようです。 一緒に写っている糸状のものは、その走っている方向から、“猫”とは関係なく、たぶんクモの糸だと思ったのですが、念のため掃除せずにそのまま撮りました。 それぞれの“猫”の体長は 2.3mmほどです。



 拡大してみると、触角、翅、脚のそれぞれの原基が確認でき、明らかに蛹です。 それぞれの前にある“お団子”は糞でしょう。
 ところで、常識的には歩き回っていた幼虫が移動を止めて蛹になるのでしょうから、なぜ1枚目の写真のように蛹が輪になっているのか、悩みました。 しかしこの特徴的な色彩と配置の蛹の集団はどこかで見た記憶がありましたので、いろいろ心当たりを探してみたところ、おちゃたてむしさんの2010年1月のブログ(こちら)にありました。 6年前に見たものを覚えていたのは、それだけ印象深かったのでしょうね。
 上記ブログのものとは少し色あいが異なるようですが、カメラの特性やフラッシュの関係などで私の写真は少し赤が強く出る傾向があるので、たぶん同種だと思います。
 おちゃたてむしさんはこの蛹を羽化させ、その成虫に対して、上條博士がヒメコバチ科の Eulophus abdominalis Nees であると同定されています。
 上條博士によると、この蜂は蛾の幼虫に外部・多寄生し、育つと寄主を離れ、その周囲の葉の表面で蛹化するとのことです。 寄生された蛾の幼虫は、蜂の蛹に囲まれた状態でしばらくは葉上に残っていますが、いずれ下に落ちてしまうようです。 これで蛹が輪になっている理由も納得できました。

(2016.1.14. 堺自然ふれあいの森)

(追記)
 持ち帰っていた蛹が2月4日に羽化しました。 羽化した成虫はこちらに載せています。


2 件のコメント:

おちゃたてむし さんのコメント...

こんばんは。
背中を丸めてお団子を見つめる猫、なかなかいい喩えですね。
私も昨年末、アラカシの葉裏についたものを見つけて持ち帰ったのですが、やはりクモの糸のようなものが絡んでいました。
蛹は前部で10個で、数日前外出中に全て羽化していました。やはりEulophus abdominalisのようです。

左木山祝一 さんのコメント...

もう羽化してしまったんですか!?
おちゃたてむしさんの2010年の場合の羽化は3月だったので、安心していたんですが・・・。