シダ植物や種子植物などの維管束植物は、陸上の乾燥に対する適応として、表面をクチクラで覆うなど、植物体内の水分を逃さない(=水が入ってこない)工夫をしています。 水は地中の根から吸収し、通導組織で植物体の各部に運びます。
一方コケ植物は根が未分化です。 根のように見える仮根がありますが、これは植物体を固定するためのものにすぎません ①生命活動に必要な水は体の各部の細胞それぞれが直接空気中から吸収します。 そのためにそれぞれの細胞が空気に触れることができるように、②葉の細胞の層はたいへん薄くなっています。
植物体の各部で水が吸収できるということは、同時に植物体の各部から水が失われることを意味しますが、③コケ植物の細胞は水分を失った状態のまま長期間の乾燥に耐えることができます。
前置きが長くなりましたが、乾燥してクシャクシャになった採集品のコウヤコケシノブを水に漬けると、水を吸って葉はまもなく元の姿に戻ります。 この葉の細胞が吸う水は根から維管束を通してのものなのか、葉の細胞が直接吸水したものなのか、確かめてみました。
上は写真の右端の葉身だけに水滴を落としたものです。 根茎など他の部分には水が付かないように注意し、水滴を落とした葉身の葉柄も濡らしていません。 この結果からすると、葉身の細胞そのものが水を吸っているようです。 これは上記①のコケの性質と同じです。
上はコウヤコケシノブの葉の一部を顕微鏡で、つまり透過光で見たものです。 右端には軸の端が黒っぽく見えています。 顕微鏡のピントをずらしても下層の細胞は見えませんから、葉身細胞の層は1層のようです。 これも上記②のコケの特徴と一致します。
コウヤコケシノブがどれくらいの期間乾燥に耐えうるのかはまだ調べていませんが、上に書いたコケの性質③との類似性についても、機会を見て調べてみるつもりです。
前に、コケシノブの仲間の前葉体がフタマタゴケなどのコケによく似ていることを書きましたが(こちら)、コウヤコケシノブの胞子体にもコケに似た側面があるようです。
◎ 本種と同様にコケに似た側面を持つウチワゴケをこちらに載せています。
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