2017-10-25

ハタケゴケの胞子の形態を模型で考える

 先日、ハタケゴケの胞子をブログに載せ、ハタケゴケの仲間の同定には、この胞子の遠心面と求心面の模様がポイントの1つになることを書きました(こちら)。 しかし立体的な胞子の形態は平面的な写真ではうまく表現できないので、模型を作ってみました。

 模型を紹介する前に、胞子形成時に起こる「減数分裂」について簡単に書いておきます。
 通常の細胞分裂は、1つの細胞が2つに分裂しますが、この新しくできた細胞は元の細胞と同じ遺伝情報を持っています。 これは分裂前に遺伝情報をコピーしておくからです。 つまり細胞分裂とは、元の情報を1とすると、それを2倍にしておき、それを1と1に分けるしくみです。 別の見方をすれば、コピーが完了しないうちは分裂が始まらないしくみになっています。
 一方、遺伝情報の内容に注目すると、例えば私たちの体の細胞は、父親からの遺伝情報と母親からの遺伝情報を持っています。 つまり同じ情報を2つずつ持っています。 これを、人として必要なn種類の情報を2つずつ持っているということで、2nと表現することにします。 上に書いたように2nの細胞が分裂しても2nです。
 有性生殖では、例えば卵と精子という2つの細胞がくっついて1つの2nの細胞になるわけですから、くっつく前の細胞はnであるはずです。 つまり、どこかで2nの細胞をnの細胞にしておく必要があります。 この2nの細胞からnの細胞を作る特殊な分裂が減数分裂です。
 減数分裂の開始時にも、2nの遺伝情報はコピーが完了していますから、細胞核の内容物は量的には4n(コピーされているだけですから、情報の質としては、あくまでも2n)の状態になっています。 この細胞からnの細胞を作るには2つに分けた後に、そのそれぞれをもう一度2つに分ける必要があります。 もう少し詳しく書くと、コピーされた遺伝情報を分ける分裂と、2nの内容を持つ情報をnにする分裂がセットになっているのが減数分裂です。 結論として、1回の減数分裂では4個の細胞が作られます。

 一般に、コケ植物も有性生殖を行っていますので(例えばこちら)、減数分裂が起こっています。 具体的には胞子母細胞が胞子に変化する時に減数分裂が起こります。 つまり、1個の胞子母細胞は減数分裂の結果、4個の胞子に変化します。


 上は胞子母細胞(2n)の模型で、ほぼ球形です。 胞子になった時の理解を助けるために、表面に模様を書き込んであります。
 この1個の球形の胞子母細胞が減数分裂して4個の胞子になります。 球形を4等分すると・・・


 上は1個の胞子母細胞から作られた4個の胞子のうちの1個を外し、残りの3個の胞子はくっついたままという、胞子間の関係が分かるようにした仮想の状態です。 胞子母細胞の表面にあった面と区別するため、胞子母細胞の時には内側に位置した胞子の面には模様を書いていません。 ですから、この模型では1つの胞子に模様のある面と模様の無い面があることになります。 この模様のある面を遠心面(distal surface)、模様の無い面を求心面(proximal surface)と呼びます。


 上の模型は、1個の胞子母細胞からできた4個の胞子がバラバラになった状態を示しています。 遠心面しか見えない胞子も、求心面しか見えない胞子も、遠心面と求心面が見えている胞子もあります。 下に前に載せた実際のハタケゴケの胞子の写真を再掲しておきますので比較してみてください。


 実際の胞子は模型よりも丸みを持っています。 丸くなることによって4個の胞子はバラバラになっていくのでしょうが、他の多くのコケの胞子に比べて、ハタケゴケなどの胞子は丸くなり方が比較的少ないために、減数分裂の様子をうかがい知ることが容易です。


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