2020-05-03

オオキヌタゴケ


 写真はオオキヌタゴケ Oedicladium serricuspe でしょう。 キハネゴケに混生していました。 分布は本州~琉球列島です。
 一次茎は這い、小さな葉をつけていて、そこから立ち上がった二次茎には長さ2mm前後の葉を密につけています。


 二次茎の葉は披針形で長く漸尖し、深く凹んでいます(上の写真)。 中肋は短く、二叉しています。 葉縁上部には、上の写真の倍率ではよく見ないと分からないほどの小さな歯があります。 赤い矢印で挟んだ所は、弱く内曲しているため、真上から見ると、葉の幅が狭くなっているように見えます。


 別の葉で、もう少し全体にピントを合わせるためにカバーグラスを強く押したところ、葉が裂けてしまいましたが(上の写真)、弱く内曲している場所などは同じです。


 翼部には大型で透明な数個の細胞があり、その上に小型で厚壁な細胞が集まっています。 葉身細胞は厚壁で、細胞壁は細胞質と同程度の厚さがあり、所々くびれています。


 上は葉の中部付近の葉身細胞です。


 上は無性芽です。 無性芽は葉腋にあり、糸状で、パピラがあります。


 上は枝の基部にあった偽毛葉です。 枝の葉と重なって分かりづらいので、線を書き加えてみたのが下です。


 偽毛葉は小葉状で、縁には細胞レベルの歯があります。


 上は仮根で、仮根にもパピラがあります。 なお、西田ら(1980)によると、本種やその近縁種には、原糸体にもパピラを持つという顕著な特徴があるということです。

(2020.3.3. 屋久島)

【参考文献】
西田 雄行, 岩月 善之助(1980):蘚類オオキヌタゴケ及びキノクニキヌタゴケの原糸体形成.日本蘚苔類学会会報2巻10号.

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