2020-10-31

トガリヒメバチ亜科の一種


 写真はトガリヒメバチ亜科の一種だと思いますが、場所的に翅脈の様子を撮ることも正面に回ることもできませんでした。 ヒメバチ科は日本で確認されているだけでも 1,500種近くいますし、未確認種もまだまだたくさんいますので、とりあえずこんな蜂がいたということで・・・。

(2020.9.2. ウトナイ湖自然観察路)


 

2020-10-30

エゾイヌゴマ

 

 北海道・ウトナイ湖の自然観察路で 2020.9.2.に撮影した写真の植物、広い意味でのイヌゴマだと思います。 和名は果実が食用のゴマに似ているが食用にはならないところからでしょう。 花期は終わりに近づいているようですが、茎先に数段になった輪生状の花穂をつくっています。
 イヌゴマの毛の多少は変化に富んでいて、毛の少ないものから順にケナシイヌゴマ、イヌゴマ、エゾイヌゴマの3変種に分けられています。 写真のイヌゴマは、たぶんエゾイヌゴマ Stachys aspera var. baicalensis になるのだと思います。

 エゾイヌゴマは北海道~本州の湿地に生育するシソ科の多年草です。 葉は披針形で対生、表面には斜め上向きの剛毛があります。 茎は4稜で、稜の上には立ったかたい毛が並んでいます。

 花は2唇形で、下唇は3裂し、内面に淡紅色の斑点がありますが、この斑点の模様は変化に富んでいるようです。 オシベは上唇に沿って4本あり、うち2本が長いのですが、上唇の先を越えてはいません。
 ガクは等しく5裂し、ガク片の先は刺状に鋭くとがっています。 上の写真のガク筒の奥には4分果が写っています。



2020-10-29

コンボウナガハリバエ

 

 写真はコンボウナガハリバエ Torocca munda だと思います。 国内のほぼ全域に分布していて、和名は腹部が棍棒のような形をしているところからでしょう。 ヤドリバエ科に分類されていて、幼虫は他の昆虫など(具体的には知りません)に捕食寄生するのだと思います。

(2020.9.2. ウトナイ湖自然観察路)


2020-10-28

クサゴケ

 

 上は北海道・苫小牧市にある北海道大学研究林で撮った写真です(2020.9.1.撮影)。 みごとに木製テーブルの上をコケが覆っていいますが、ざっと見るかぎり、1種類のコケのようでした。 このコケの種類を知りたくなって、ほんの少しいただいて調べてみたところ、クサゴケ Callicladium haldanianum でした。
 本種は大阪付近ではあまり目にしませんが、少し涼しい所では普通種のようです。 前に載せた本種は木製の橋の欄干の上に育っていましたが(こちら)、古くなりかけた木が好きなようですね。


 這っている茎から不規則な羽状に枝を出しています。

 葉はやや丸くつき、葉を含めた枝の幅は1mmほど、枝葉の長さは 1.5~2mmです。

 蒴柄の長さは2~3cmです。 蒴歯の様子も調べたかったのですが、蒴が古く、蒴歯はほとんど残っていませんでした。
※ 帽をつけたクサゴケをこちらに載せています。

 上は枝葉です。 葉先はやや急に細くなり、葉面は凹んでいます。 中肋は二叉して短く、翼部は格子状の明瞭な区画をつくり、翼細胞は方形で薄壁です。

 上は葉身細胞です。


 偽毛葉は披針形です(上の2枚の写真)。

 上は茎の横断面です。 この仲間の分類では茎の表皮細胞の様子も大切になってきますが、本種の表皮細胞は分化していません。


2020-10-27

アカミゴケ・コアカミゴケ



  上はアカミゴケ Cladonia pleurota だろうと思います。 アカミゴケは冷温帯~亜寒帯を中心に分布する地衣類です。 上も北海道・樽前山の標高 650m付近で撮った写真で(撮影:2020.9.1.)、周囲はシモフリゴケです。 赤い子器は盃縁か盃縁から発芽した太い分枝の先につきます。


 上はコアカミゴケ Cladonia macilenta だろうと思います。 こちらは暖温帯に分布の中心を持つ地衣類で、地上や樹皮上などに生育する普通種です。 上は 2016.7.13.に京都市の西芳寺川で撮った写真です。


2020-10-26

シモフリゴケの蒴

 

 シモフリゴケ Racomitrium lanuginosum の蒴です。 近縁のエゾスナゴケの蒴と比較すると、似ていますが、全体がふっくらしているようです。

(2020.9.1. 北海道 千歳市)

◎ シモフリゴケの全体の様子はこちらに、葉の細胞の様子はこちらに載せています。


2020-10-25

スッポンタケ

 下は Part1の 2013.10.24.からの引っ越し記事です。

  スッポンタケ Phallus impudicus は寿命の短いキノコで、美しい姿の状態にはなかなか会えませんが、今回はたくさんのスッポンタケの生えている所があり、いい状態の写真が撮れました。
※ スッポンタケに関する基礎的なことは、こちらの記事をご覧ください。

 まずはスッポンタケ発見の経緯から・・・
 薄暗い林の中を歩いていると、足元からベッコウバエが飛び立ちました。 飛び立った場所を見ると、スッポンタケがありました。
 スッポンタケは、においでハエの仲間などを呼び寄せ、胞子を運んでもらいます。 このベッコウバエは、スッポンタケに惹かれるのですが、私がいるので近づくこともできず、30分ほどの間、ずっと近くにいました。

 上の写真、右下にスッポンタケがあります。 そしてその奥、写真の上部中央の木の切り口にベッコウバエがとまっています。

 上がそのベッコウバエです。

 よく見ると、スッポンタケはあちこちにありました。 上の写真には1枚目とは異なるスッポンタケが2本写っています。

 スッポンタケの「卵」もたくさんありました。 上の写真では、下中央と左端に「卵」が、右上に伸びたスッポンタケが写っています。 下中央の「卵」は、少し割れかけています。

 たくさんの「卵」があったので、断面を作ってみました。(上の写真:この写真に関する解説をこちらに載せています。)

 静かにしていると、ハエの仲間も来はじめました。 最初に載せたベッコウバエは私が立ち去るのを待っているようでしたが・・・。
 上の写真は横に木があって回り込めず、この角度からしか写真を撮れず、ハエの種類は分かりません。

(2013.10.21. 金剛山)








2020-10-24

オカムラゴケ?

 北海道・苫小牧市の樹幹についていた上の写真のコケ(撮影:2020.9.1.)、ひも状に伸びているのはバンダイゴケですが、いちばんたくさん写っているのは・・・

 枝先に無性芽らしきものがついています。 写真を見て、まず思い浮かんだのはホソオカムラゴケでした。 しかし、ホソオカムラゴケの分布は本州~九州(平凡社)で、北海道には分布していません。
 改めて観察しなおすとともに、ホソオカムラゴケに近縁の種を調べてみると・・・

 上は乾いた状態で、葉は枝に接していますが、ほとんど縮れていません。 枝先が細く鞭状に伸びている枝があったり、枝は中部がもっとも太くなっています。 これらはオカムラゴケ Okamuraea hakoniensis の特徴に一致しますし、分布域も北海道~九州です。。
 平凡社の図鑑の検索表では、本種の枝先に無性芽はないことになってるのが気がかりですが、そのことは保留して、とりあえず観察を続けます。

 上は湿らせた状態の枝で、乾いた状態と比較すると、葉は少し開いています。 枝葉はホソオカムラゴケの枝葉より大きく、大きい葉では長さ2mmほどあります。


 上の2枚は枝葉です。 下部には弱い縦じわがあります。 中肋は強壮で、葉長の2/3に達しています。 葉縁はほぼ全縁で、葉先近くに微歯があります。 また2枚目の写真のように、葉縁が少し外曲している葉もあります。

 上は葉の基部で、翼部の細胞はほとんど分化していません。

 葉身細胞は長楕円形~長い菱形で、長さは20μm前後です。

 上の写真が最初に書いた無性芽らしきもので、観察していると、たくさん落ちてきます。 たしかに一般に無性芽と呼ばれているものに比較すると少し大きいのですが、これが無性芽ではないとすると、新しく作られた伸びかけの枝がとても落ちやすく栄養生殖に役立つと考えられます。

◎ オカムラゴケと思われるコケをこちらに載せています。

2020-10-23

タカラダニ

  以下は Part1の 2014.7.4.の記事をこちらに引っ越しさせたものです。

 上の赤い楕円体状のものが、カメムシの仲間の幼虫に取りついているタカラダニ( ダニ目前気門亜目タカラダニ科 )です(撮影:2013.4.25.)。 この2年間に撮ったタカラダニの写真のいくつかを集めてみました。

 上はカラスハエトリに取りついたタカラダニ、下はその拡大です。 背景がピンクなのはピンク色に塗られた板の上にいるからで、色彩に特殊な技法を用いたわけではありません。(撮影:2013.6.27.)

 よく見ると、タカラダニは突き刺した口吻のみで体を維持し、細い8本の脚は体に沿わせています。



コハナグモに寄生しているタカラダニ 2014.5.16.

イオウイロハシリグモに寄生しているタカラダニ 2014.6.3.

ヤドリバエの一種に寄生しているタカラダニ 2013.6.13.

 虫たちの体液を吸って膨れたタカラダニの体は艶があり、美しく見えます。 タカラダニの名前は、虫たちが美しい宝物( のようなダニ )を持ち歩いているように見えるところからと言われています。
 タカラダニの生活史は謎に包まれています。 写真を撮った月日も書いておきましたが、見かけるのはほとんど4月の終りから6月です。 他の時期はどこでどのように暮らしているのでしょうか。
 何を餌にしているかもよく分かっていません。 このようにいろんな虫に寄生しているところはよく観察されますが、花にもいて、花粉を食べているようです。 人の刺咬被害は、少なくとも日本では報告されていません。
 また、見つかるのはすべてメスで、単為生殖を行っているのではないかと考えられています。

こちらにはキオビツヤハナバチに寄生しているタカラダニを載せています。





2020-10-22

ナガバヒョウタンゴケ

 

 2020.9.29.の京都府立植物園でのコケ調べ、ホソウリゴケの群落の中に別のコケが混じっていました(上の赤い円内)。 顕微鏡で観察しても分からず、同じ調査に参加された西宮市のSさんにお聞きしたところ、ナガバヒョウタンゴケのようでした。
 ナガバヒョウタンゴケ Chenia rhizophylla は比較的大きなコケでありながら、1900年代になって初めて見つかったこと、生育しているのは市街地など人との関りが深い場所であることなどから、外来種の可能性の高いとされているコケです。 国内での分布は本州~九州、小笠原とされています。
 胞子体は日本では知られておらず、和名は最初ヒョウタンゴケ科と思われたところからですが、現在はセンボンゴケ科に分類されています。

 上の写真で茎の高さは4mmほどです。 葉は特に葉先近くで反り返っています。 ほとんどの葉先が赤褐色に着色しています。
 本種の仮根の先端には無性芽ができるようですので、きれいに洗って仮根までよく分かるようにしました(上の写真)。 この後、顕微鏡の倍率を上げて仮根を観察しましたが、残念ながら無性芽は観察できませんでした。

 葉先が反り返っていますので、プレパラートにすると、上の写真でも葉先近くが折れ曲がってしまっています。 葉身細胞は上部で丸みを帯びた六角形~短矩形、下部では矩形です。 葉縁の細胞は内側の細胞より小さく、葉の上部にはまばらに微鋸歯が見られます。 葉先の細胞は赤褐色です。

 上は明度を上げすぎて先端の細胞の赤褐色がほとんど消えてしまいましたが、先端に少しだけ色が残っています。 先端の細胞の細胞壁の先端部が厚くなり、色はこの細胞壁についているようです。
 本種はしばしば葉先に仮根をつけます。 たぶんこの色のついた細胞が仮根になるのだと思います。

 上は葉の中肋付近の横断面です。 中肋にはステライドなどの特徴のある細胞は見られません。

 茎頂に造卵器らしいものが見えたので、周辺の葉などを取り除いて撮ったのが上の写真で、下はさらに葉や苞を取り除いて高倍率で撮った写真です。

 本種は雌雄異株で、上に書いたように胞子体は日本では観察されていません。 上の観察結果からは、日本には雌株だけが入ってきていて雄株は入ってきていないと考えられます。


2020-10-21

ヤナギタンポポ

 

 上はヤナギタンポポ Hieracium umbellatum だと思います。 北海道・ウトナイ湖の湖岸に咲いていました(撮影:2020.9.2.)。 国内の分布は、北海道、本州、四国となっています。

 上はウトナイ湖に沿って作られた自然観察路で撮った写真で、地面は湿りがちで、周囲にはいろいろな植物が育っていました。
 葉は細長く、葉柄は無く、葉縁にはまばらに少数の鋸歯があります。

 上は果実です。 タンポポ亜科の多くの果実は先が細くなり、しばしば嘴を作って冠毛につながりますが、Hieracium(ヤナギタンポポ属)は果実の先が細くなりません。