ネジバナの別名はモジズリ、百人一首にある嵯峨天皇の皇子源融(みなもとのとおる)の
みちのくのしのぶもじずり誰ゆえに乱れそめにし我ならなくに
は、よく知られています。
ちなみに、「みちのくのしのぶもじずり」は「乱れ」にかかる序詞ですが、次のような話も伝わっています。
「しのぶもぢ摺り」は、捩(もじ)れ乱れた模様のある石(文知摺石)に布をあてがい、その上から忍(しのぶ)草などの葉や茎の色素を摺り(すり)付けたものです。この石は「鏡石」として福島県福島市にある文知摺観音の境内に残されていますが、ほんとうのところは源融は「遙任」であり、陸奥国には赴任していないようです。
陸奥出羽按察使を任され陸奥国に出向いた源融は、気立てのやさしい娘と出会い、愛し合うようになりましたが、再会を約束して融は都に帰ります。 残された娘は、融恋しさのあまり、文知摺石を麦草で磨き続けました。 ついには融の面影を鏡のようになった石に映し出すことができましたが、精魂尽き果てた娘は融との再会を果たすことなく亡くなってしまいます。
文知摺観音は「信夫捩摺(しのぶもじずり)」の発祥の地とも言われています。 ここで言う信夫捩摺は、上記の話よりも後の時代の、模様がもじれて(もつれて)乱れたような絹織物であったようですが、たいへん高価で、江戸時代初期に姿を消してしまったようです。
閑話休題、話をネジバナに戻します。 たくさんの小さな花が花茎の周りにらせん状にねじれてついているのが和名の由来であることは言うまでもないでしょう。
ネジバナはラン科の植物です。 1つの花の各部の名称を書き入れてみました(上の写真)。 ラン科の花は個性豊かですが、基本的にはガク片が3枚、花弁が3枚で、そのうちの咲いている状態で下方に位置する花弁(一部例外あり)は他の花弁と異なる形態となり、「唇弁」と呼ばれています。
ラン科の花の特徴の1つとして、上記の花の特徴の他にも、メシベとオシベは合体し、「ずい柱」となっていることや、一度の受粉でたくさんの種子を作ることができるように、たくさんの花粉はまとめられて花粉塊となっていて、花粉塊の端には虫にくっつくための粘着部分をもっているものも多いことなどが挙げられます。
ネジバナでは、1つの花が小さいうえに、ずい柱は花被に隠されていて、肉眼ではなかなか見ることができません。
上の写真は、右下の花の正面から奥にピントを合わせて撮ったもので、ずい柱の一部が写っています。
この花に虫が入っていく代わりに、近くにあったイネ科の枯れた茎を差し込んでみると・・・
みごとに花粉塊がくっついてきました(上の写真)。
※ 上は 2014.6.23.に撮影し、Part1の 2014.7.3.に載せていた記事を、こちらに引っ越しさせたものです。
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