2022.7.22.の読売新聞の「なるほど科学&医療」欄にファージの医療応用についての記事が載せられていました。
細菌による病気の治療で、多剤耐性菌が問題になっています。 遺伝子の突然変異で、ある抗菌薬が効かなくなった細菌が生き残り、そんなことが繰り返されて、どんな抗菌薬も効かなくなった細菌が出現すると、抗菌薬による治療ができなくなります。 そんな多剤耐性菌対策として注目されているのがファージ療法です。
ファージは正式にはバクテリオファージ(bacteriophage)と呼ばれているウイルスの1種です。 ファージ(phage)は「食べる」という意味のギリシア語 phagos に由来しますから、バクテリオファージとは「バクテリア(=細菌)を食べる」という意味になります。 このウイルスは細菌にのみ感染しますが、多くの種類があり、それぞれ感染する細菌は決まっています。 ファージは細菌にくっつくと自らのDNAを細菌内に注入し、その遺伝情報に基づき、細菌が持つ酵素などを使って、細菌内にたくさんの新たなファージを作ります。 そしてこれも細菌の細胞内にある物質を使ってファージのDNA情報によって細菌の膜を溶かす「溶菌酵素」を作り、これで細菌の細胞膜を破り(=細菌を殺して)外に出ます。
ファージの体長は 0.1~0.01μmと、とても小さく、体を作っているタンパク質の立体構造を反映したとてもおもしろい外見をしています。 上は大腸菌に感染するT4というファージの模型で、高槻市にある生命誌研究館からいただいたものです。
T4ファージは大腸菌にくっつくと、鞘を縮めることで鞘に入っていたスパイクを大腸菌の体に突き刺し、その先からカプシドに入っていたDNAを大腸菌の細胞内に注入します。
多剤耐性菌に対してだけではなく、腸内細菌のコントロールなど、様々なファージの活用が考えられます。 最近ではファージの溶菌酵素を人工合成することも行われているのですが、日本国内ではファージの研究者が少なく、本格的な創薬に結び付いていないようです。
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