2022-11-29

キツネノオゴケ

 写真のコケは以下の観察結果からキツネノオゴケ Thamnobryum alopecurum だと思います。 河原に降りる道の林内の岩上で育っていました。

 茎は這い、そこから立ち上がった二次茎の基部近くから新たな茎が伸びていました。 二次茎の長さは6cmほどになり、上部で密に羽状に分枝しています。

 二次茎の下部には小形の葉がまばらについています。

 二次茎の中上部の葉は丸くついて扁平にはなっていません。 茎葉の葉の長さは2mmを少し超え、枝葉の長さは2mm以下です。

 枝葉は卵形で、葉先近くの葉縁には歯があります(上の写真)。 中肋は1本で、葉先近くに達しています。

 上は葉先付近を背面から撮っています。 中肋背面の上部には数個の歯があります。

 明るさや倍率などを変え、中肋背面の歯を分かり易くしてみました(上の写真)。

 上は基部から1/3ほどの所の、幅が最も広くなっているあたりの葉身細胞です。

(2022.8.25. 札幌市 定山渓温泉)

◎ キツネゴケとしてこちらに載せたものは、葉の形などはよく似ていますが、全体の姿は少し異なっています。

2022-11-27

コバノスナゴケ

 平凡社の図鑑では、シモフリゴケ、エゾスナゴケ、コバノスナゴケ、ナガエノスナゴケなどは全て Racomitrium(シモフリゴケ属)となっていますが、これら日本産旧シモフリゴケ属は5つの属に整理されています(蘚苔類研究12巻3号)。 上記のコケについても、シモフリゴケ以外は Racomitrium ではなくなりました(こちら)。
 私の頭の中も現在混乱中で、これまで分かったつもりになっている種についても見直しが必要で、それぞれの属の特徴を理解する必要性を感じています。
 ということで、今回はコバノスナゴケ Niphotrichum barbuloides と思っているコケ(2022.8.25.撮影)です。 なお、下の文中の太字の部分は、Niphotrichum属の特徴とされているものです。

 上がそのコケです。 札幌市の定山渓の岩上に育っていました。

 茎は長く伸び、たくさんの短い枝を出していますが、赤い矢印のように長く伸びた枝(新しい茎)もあります。

 湿った状態では、ほとんどの葉は上のように反り返っています。 葉の中央部の縁は反曲しています。


 上の2枚は別の葉の葉頂の様子です(倍率は異なります)。 透明尖には歯があり、しばしば少数のパピラがありますが、長さは葉によって異なり、時には見られないこともあります。 透明尖の基部は葉縁に沿って下延しています。
 中肋は葉頂近くに達しています。 葉の上部はキール状ですが、どうにか開いて撮ることができました。

 翼細胞は発達していて、透明~淡黄色で薄壁の大きな細胞からなっています。 翼部の境はそれほど明瞭ではありません。 葉の基部の細胞は黄色みを帯びています。

 上は葉の中央部の葉身細胞で、細胞腔上に複数のパピラが見られます。

 上は葉の下部の細胞で、細胞腔は狭くて厚壁です。 葉の基部に近づくにつれ、パピラは少なくなり、基部付近ではほとんど無くなります。

 上は葉の基部から1/3ほどの所の断面です。 パピラは背腹両面に同じように見られます。 中肋は背面側に突出しています。

◎ これまでに本種と思っていたコケをこちらこちらに載せています。 見直してみて、たぶん間違いではないと思いますが・・・。

 

2022-11-25

アラスカヤノネゴケ

 

 上は札幌市南区で 2022.8.25.に撮った写真です。 大きな葉はコツボゴケですが、小さな葉はアラスカヤノネゴケまたはその変種のダイセツヤノネゴケの枝葉だと思います。

 群落をほぐして1本の茎を取り出してみました(上の写真)。 枝が密に出る所と、ほとんど出ない所があるようです。


 上の2枚は茎葉です。 茎葉を見ると前にダイセツヤノネゴケとしたもの(こちら)より、葉の凹みが少し少ないように思いますし、葉先がはっきりしているようですので、アラスカヤノネゴケ Bryhnia hultenii としておきます。

 上は茎葉背面の中肋の先端付近です。 中肋の先端が1個の歯で終わりそうな葉も見られました。

 上は葉身細胞です。

2022-11-23

アカミノハリガネゴケ


 写真はアカミノハリガネゴケ Bryum atrovirens でしょう。 多くの場合、蒴の無い Bryum(ハリガネゴケ属)の同定はとても難しいのですが、本種の場合は・・・


 下部の葉腋や仮根に赤色(~黄色)の無性芽をたくさんつけます(上の写真)。 上の写真では土などを取り除く過程で数個の無性芽が外れてしまっています。
 和名の「アカミ(赤実)」はこの無性芽のことなのか成熟した蒴の色なのか分かりませんが、私は前者のような気がします。


 上は光学顕微鏡での観察です。 無性芽の径は 0.1~0.2mmです。


 いろいろな長さの葉が混じっていました(上の2枚の写真)。 少しわかりにくいのですが、下部の葉縁は反曲しています。

 葉縁には舷があります(上の写真)。

 葉身細胞は長六角形で、長さは 45~65μmでした(上の写真)。

2022-11-21

キノウエノケゴケ


 写真はキノウエノケゴケ Schwetschkea matsumurae でしょう。 小形のコケで、茎は樹幹を這い、不規則に分枝し、枝は斜上しています。

 葉は披針形で基部はやや狭く、先は細く鋭頭、中肋は葉の中部で終わっています。 翼部は方形の細胞が明瞭な区画を作っています。

 葉身細胞は狭六角形~菱形で、長さ 40~65μmです。

 上は、他種も混ざっていてややこしいのですが、10月下旬に撮影した蒴です。 蒴は直立し、帽は僧帽形で、蓋には嘴があります。

 蒴糸の観察には時期が早いのですが、蓋がついたままで断面をつくり観察してみました。 外蒴歯には全面に細かいパビラがあり、内蒴歯は基礎膜が低く、歯突起は細く、間毛はありません。

◎ キノウエノケゴケはこちらにも載せています。

 

2022-11-20

イワザクラ

 イワザクラ Primula tosaensis は、岐阜県と紀伊半島、四国、九州の丘陵帯上部から山地帯にかけての石灰岩の隙間などに生えるサクラソウ科の多年草です。
 上は 2022.11.19.に大阪市の「咲くやこの花館」の高山植物室で撮った写真です。 本来の開花時期は春なのですが、管理のしかたによっては今ごろ咲かせることもできるのですね。


2022-11-18

キイウリゴケ

 写真はキイウリゴケ Brachymenium nepalense です。 道路脇などによく見られるホソウリゴケと同属ですが、本種は樹上性で、乾くと上の写真のように縮れます (ホソウリゴケの葉は乾くと茎に接着し、縮れません)。

 上は湿った状態です。 茎の長さは1cm前後になるのですが、写真のものはホソウリゴケほどの長さしかありませんでした。

 葉は狭倒卵形~卵形で、中肋は葉先から長く突出しています。

 葉身細胞は狭六角形~六角形、葉縁には舷があります。

(2022.11.10)

2022-11-17

ベニモンマキバサシガメ


 写真はベニモンマキバサシガメ Gorpis japonicus だと思います。 大阪府の北部にある能勢の初谷で 2022.11.16.に行われたコケの観察会で、カラヤスデゴケを撮ろうとした時に、その上にいました。 小さな昆虫を捕らえて吸汁する肉食性で、体長 12~13mm、森林性です。 成虫は夏の終わりから秋に見られます。

 被写界深度を深めようと絞りを絞ってフラッシュを使ったところ、夜中の撮影のような写真になってしまいました・・・(-_-;

2022-11-15

タチハイゴケ

 

 タチハイゴケ Pleurozium schreberi が蒴をつけていました。 茎は赤色で長く、やや羽状に平らに分枝しています。

 大形のコケです。 蒴柄の長さは平凡社では3~4cmとなっていて、上の場合は4cmを少し超えています。

 葉は茎にやや覆瓦状についています(上の写真)。

 上は茎葉です。 茎葉は長さ2~2.5cm、卵形~倒卵形で、葉面は凹んでいます。

 上は茎葉の翼部です。 翼細胞は厚壁な丸みのある方形~矩形で、褐色の明瞭な区画を作っています。

 上は茎葉の葉身細胞です。

 上は枝葉です。

(2022.9.4. 北八ヶ岳)

◎ タチハイゴケはこちらにも載せています。