2020-08-27

このコケは?


 上は湿った状態の、岩についていたラセンゴケ Herpetineuron toccoae です(撮影:2017.11.8.武田尾)。


 上は乾いた状態のラセンゴケで(2020.5.1.奈良市)、葉は茎に接しています。


 上も乾いた状態のラセンゴケで(2020.5.1.奈良市)、樹幹についていました。

 ラセンゴケは1枚目の写真のように、二次茎につく葉が先端に向かうにつれて次第に小さくなり、ついには二次茎の先端が鞭状に伸びることもしばしばあり、また3枚目の写真のように、乾いた状態ではしばしば二次茎が犬の巻き尾のように(または「?」の文字のように)曲がるという特徴があり、ルーペでも比較的見分け易い種です。 そのうえ葉を顕微鏡で観察すると、下の写真(2枚目の写真の葉です)のように、中肋が葉先近くでうねうねと左右に揺れ(和名はこのことに由来)、細胞の配列も特殊で、数個の細胞がまとまりをもって,平行四辺形のように見える区画をつくっていて、同定間違いが少ない種でしょう。


 以上のようにすぐに同定できるので、普段はあまり一次茎のことは気にしませんが、1枚目~3枚目の写真は二次茎で・・・


 上の写真のように二次茎は基物上を這う一次茎から出ています。

◎ ラセンゴケについてはこちらにも載せています。

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 ところで・・・



 上のようなコケがありました(2020.8.4.兵庫県佐用町)。


 上は育っていた場所の様子で、湿岩の上をヒメシノブゴケと絡み合って垂れ下がっていました。





 上の4枚は葉の様子です。

 種名の見当がつかなかったので、コケに関心のある者が集うコケサロン(最近はCOVID-19の影響でZoomを使って実施しています)で写真を見ていただいたところ、K氏からラセンゴケではないかと言っていただきました。
 改めて葉を見ると、基部からあまり幅の変わらない中肋が、葉の上部でわずかですが揺らいでいます。 また葉の上部の規則的とは言えない鋸歯もラセンゴケににています。
 また、平凡社の図鑑を見ると「(ラセンゴケの)二次茎は長さ数mmから5cmと変異が大きく(以下略)」と書かれています。
 普段見るラセンゴケの姿とはずいぶん違うのですが、一次茎がよく伸びて二次茎が伸びていないラセンゴケだと思いました。

 このことをSNSに載せたところ、秋山先生からコメントをいただきました。 先生によると、 葉がわずかだが舟形にくぼんでいること、葉先に明瞭な重鋸歯がでること、葉細胞が短い卵形であること、葉翼部の細胞が矩形であること、平行四辺形の区画をつくらないことなどから考えると、Thamnobryum(オオトラノオゴケ属)の1種だろうということでした。 この属は整理が進んでいないので、種名まではわからないということです。
 先生、ありがとうございました。