2018-08-08

イワヒメワラビ

Part1の 2013.8.9.からの引っ越し記事です。(一部書き換えています。)
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 写真はイワヒメワラビ Hypolepis punctata です。 本種は、昨日記事にしたヒメワラビやミドリヒメワラビ(以下「ヒメワラビなど」と書くことにします)と一見よく似ています。 しかし、ヒメワラビやミドリヒメワラビがヒメシダ科であるのに対し、本種はワラビなどと同じコバノイシカグマ科です。
 葉が展開する時期だと、イワヒメワラビとヒメワラビなどとの違いはすぐにわかります。 イワヒメワラビでは、ワラビなどと同様、羽片の展開に時間差が見られ、下部の羽片がある程度開いてから次の羽片が開きはじめます(上の写真)。
 化石から陸上植物の進化を考えると、根・茎・葉の区別が無かったところから、大葉類の葉は平面的に分岐を繰り返した枝から作られていったと考えられています。 枝は下から上へ伸びながら分化していきますから、羽片の展開に時間差が見られるのは、葉が枝の性質を残しているからではないかと考えられています。


 ヒメワラビなどより毛の多いのもイワヒメワラビの特徴です。 上はまだ開ききっていない上部の羽片を撮ったものですが、たくさんの白毛が見られます。


 ソーラスの様子を見ればヒメワラビなどとの違いは、もっとはっきりします。 イワヒメワラビのソーラスには包膜がありません。 上の写真でも毛がたくさん確認できますが、よく見ると、毛の先が膨れています。
 下はこの毛をもう少し拡大したものです。


 この毛は腺毛で、指で触れても少し粘ります。

 視点を下に下げます。 


  上は葉柄下部の、根茎に接する部分を撮ったもので、右に葉身があります。 この部分も、毛は太くなっていますが、毛だけで、ヒメワラビなどのように鱗片はありません。 鱗片が無いというのも、コバノイシカグマ科の特徴です。
 ところで、イワヒメワラビの地下茎は長く地中の浅い所を這い、まばらに葉を出す比較的大型のシダですが、葉柄は、根茎に接する所でも、そんなに太くはありません。 そんな葉がどうして真っ直ぐに立っていられるのでしょうか。 左右に長い棒(地下茎)の中央に垂直に棒をくっつければ(葉)、前後にユラユラするはずです。
 じつはイワヒメワラビの地下茎と葉との関係は、3本足のマイクスタンドが安定して立っているようなしくみになっています。


 上はイワヒメワラビの根茎を掘り出してみたものです。 石か何か障害物があったのでしょう、“マイクスタンドの足”の1本は波打っていますが、安定して葉をほぼ垂直に展開しておけるつくりになっています。 このようなしくみはどのようにしてできるのでしょうか。


 上はイワヒメワラビの地下茎の先端付近を撮ったものです。 右から伸びてきた地下茎が二股に分岐し、奥の方は地下茎として伸び続け、手前は葉として上に伸びようとしはじめていますが、その葉柄になる部分の下部に、新しい芽ができています。 この芽は「腋外芽」と呼ばれているのですが、手前に伸びてきて新しい地下茎となっていくはずです。 つまり、葉柄を中心に考えると、元からあった地下茎と新しく2方向に伸びる地下茎の、3方向に地下茎が走っている姿になります。
 腋外芽は、コバノイシカグマ科ではよく見られるのですが、特にイワヒメワラビでよく発達しているようです。

(2013.8.2. 堺自然ふれあいの森)

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