2021-01-10

エゾホウオウゴケ?

 谷間の斜面で育っていたホウオウゴケの仲間、30cmほど下には水が流れています。 上の写真にもケゼニゴケオオジャゴケが写っていて、湿ってはいるのですが、水が滴っているような環境ではありません。

 上は群落の中の平均的な植物体です。 葉は10対前後で、胞子体はどの植物体も茎頂についていました。

 上は葉で、ほぼ全周に舷があります。

 上は葉先で、中肋は葉先近くに達しています。 舷は葉先近くで急に消えています。

 上は葉の基部で、中肋より右が腹翼、左が背翼です。

 蒴の見られなかった植物体の茎頂部に、葉に覆われた褐色のものが見えたので、覆っている葉を破って撮ったのが上の写真です。 Aは生長しつつある胚が内側にある造卵器、Bは胚が育たなかった造卵器、Cは精子を出して空になった造精器だと思います。 下はBとCがよく分かるようにした拡大で、側糸も見えています。

 造精器と造卵器が混生しているようにも見えるのですが、雄器は茎頂近くの別の葉の葉腋にあるのかもしれません。 造精器は茎頂を離れた下の葉腋など、他の所にはみつけられませんでした。 他の蒴をつけていない植物体でも同様でした。

 上は胞子で、長さは 12~15μmです。

 以上の観察結果を基に平凡社の検索表でたどると(A~J は平凡社検索表の記号)、中肋があり(A)、植物体基部に原糸体は見あたらず(B)、葉身細胞は密で縦横ほぼ等長(C)、腹翼・背翼・上翼に舷があり(D,E)、蒴は直立・頂生(F,G)、腹翼基部の細胞は長さ27マイクロメートル以下(H)、雄花序は茎の基部ではない(I)、胞子の径は10-19μm(J)と進んで、エゾホウオウゴケ Fissidens bryoides に落ちます。
 しかし種別の解説を読むと、ジョウレンホウオウゴケの特徴もみられるような気もします。 ジョウレンホウオウゴケは本種によく似ているのですが、特に次の2つが気になります。
 1つは、本種の舷はふつう葉先に達して中肋と合流するようですが、ジョウレンの舷は葉先より下で急に消えます。
 もう1つは雄花序です。 本種は雌雄同株(異苞)で、雄花序は葉腋につくのに対し、ジョウレンの雄器は雌器と混生します。
 平凡社の検索表では、本種とジョウレンとは、最後のJで分かれていて、その違いは上に書いた胞子の大きさ(数値的にいちばん見分けやすいと判断し、重視しました)以外には、生育場所、古い葉の色、背翼の基部が茎に下延するか否かなどがあります。

(2021.1.5. 箕面公園)


0 件のコメント: