写真はウロコハタケゴケ Riccia lamellosa でしょう。 本種は近年に日本に移入してきた帰化種であると考えられており(古木、2000)、2001年に初版が発行された平凡社の図鑑では、検索表にあるのみで、産地も埼玉県のみになっています。 しかしその後に分布が広がったのか、上の写真を撮影した京都市内の寺でも、ハタケゴケの仲間のほとんどが本種でした。
上は葉状体の横断面を作り、縁に注目して撮った写真で、透明な腹鱗片が葉状体の縁から少し離れて存在しています。 結果として、本種を上から見ると、腹鱗片が葉状体の縁からはみ出して見え、ルーペレベルでは葉状体に白い縁取りがあるように見えます。
ウキゴケ科では、胞子体は葉状体の中に埋もれた形で成熟し、成熟すると胞子体の上に位置する葉状体の背面が破れたり消失したりして胞子が露出します。 上の写真では葉状体背面の一部が消失してできた孔の奥に成熟した胞子の塊が見えています。
この胞子塊を取り出して顕微鏡で胞子を観察したのが下の写真です。
上はピンボケではありません。 胞子はほぼ球形ですから頂にピントを合わせれば輪郭はボケますが、上の写真は頂にきちんとピントを合わせています。
Riccia(ウキゴケ属)では胞子の表面の模様が種を区別する重要な特徴となっていますが、網目模様がはっきりしないのが本種の特徴の1つです。
この仲間では葉状体が伸びながら次々と新しい胞子体を作っていきます。 上の胞子はほぼ成熟していると思われますが、葉状体の先の方には若い胞子体があるはずです。
葉状体の断面を作って調べた結果、上のような、まだ葉状体に沈生している若い胞子体がありました。 丸い袋に包まれた中の胞子の数が少ないのは、断面を作る時にこぼれた胞子があるためでしょう。 赤褐色のひも状のものは、枯れた造卵器の頸部でしょう。
上のような、まだ受精していない、頸部を少し葉状体の外に出している造卵器もありました。
上のような中央に突起のある小さな孔がたくさん並んだ葉状体がありました。 この孔をねらって断面を作ったのが下です。
上は造精器ではないかと思います。 ちょうど造精器を縦断する切片は作れず、わかりにくくなってしまいましたので、下に線を入れたものを載せておきます。
(2020.11.11. 京都市内)
◎ ウロコハタケゴケはこちらにも載せています。 また、こちらには9月下旬のまだ若い子器を持ったウロコハタケゴケを載せています。
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