上の写真のコケ、名前を調べてほしいと頼まれたコケですので、生育状況を示す写真はありません。 葉の長さ1~1.5mm、茎の高さ3~5mmの小さなコケで、蒴柄は赤っぽい色をしています(撮影:2023.4.24.)。
町中にあったコケで、珍しいコケではないはずなのに、どうしても分からず、facebookに載せたところ、N先生からヒントをいただき、ヤノウエノアカゴケ Ceratodon purpureus にたどりつくことができました。
分からなかった原因は、よく見る本種とは葉形がかなり異なっていたからですが、N先生によると、本種の葉は伸びたり伸びなかったりして、よく騙されるとのことです。
上が問題の葉です。 2枚の葉を載せていますが、他の葉も同様で、卵形に近い形をしています。 平凡社の図鑑では、本種の葉は「幅広い披針形~披針形」となっていて、私がこれまでに見た本種の葉もそのような葉で、基部が最も幅広く細長い葉でした。 しかし、この葉形以外の特徴は、上の写真で葉先近くを除き葉縁が外曲していることを含め、たしかに本種の特徴をよく表しています。
上は葉先です。 葉先近くの葉縁には小さな歯があり、中肋は葉先に届くか短く突出しています。
葉の中部~上部の細胞は方形~短い矩形です(上の写真)。
上は葉の断面です。 断面で見ても葉身細胞にパピラはありません。 中肋はステライドが背面にあります。
蒴は傾いてつき、基部にこぶがあります。 蓋は円錐形です。 帽は長いのですが、蓋はそんなに長くはなく、先は尖っていません。
上は若い蒴の蓋を無理やり剥がして蒴歯を撮っています。 口環はよく発達しています。 蒴歯は基部近くまで2裂し、明瞭な関節があります。 蒴歯全面にとても細かいパピラがあるようです。
◎ ヤノウエノアカゴケはこちらやこちらにも載せています。