2015-12-18

ウスツメゴケ


 上の写真は山の斜面にあったウスツメゴケ( Peltigera dilacerata )を上から撮ったものです。 近くに生えているのはコハネゴケでしょう。
 ウスツメゴケは地衣類です。 黒っぽい部分が地衣体、橙色のものが子器で、地衣体が他のツメゴケの仲間に比較して薄く、子器が爪のように見えるところからの和名でしょう。


 上は斜め下から、子器の巻き込んでいる様子を撮ったものです。


 上の写真は左が湿った状態で右が乾いた状態です。 左は右とつながっていたものを、撮影直前に切り離し、湿らせたものです。 地衣類は菌類と藻類との共生体ですが、湿らせることで急に光合成をする藻類が増えるはずもなく、湿ると上皮層の反射が少なくなり、その奥にある藻類層の色がよく見えるようになったということでしょう。


 上の写真は乾いたウスツメゴケを裏側から撮ったものですが、湿った状態でも、裏の色はほとんど同じでした。 腹面と同色の脈が見られます。 黒っぽいのは偽根です。
 よく似たツメゴケの仲間にアカツメゴケがあるのですが、アカツメゴケの網状脈は褐色で、偽根は密につくとのことです。


 上は地衣体の断面です。 脈の横断面で切っていますので、中央下部が膨れています。 切片を作る段階で失ってしまった部分を点線で補いました。
 いちばん上の層が上皮層で、その下に藻類層があります。 ウスツメゴケなどの藍色ツメゴケ類はシアノバクテリアを共生藻としていますので、藻の細胞はとても小さく、その1つひとつを確認することはこの倍率では難しいでしょう。
 藻類層の下には菌類の菌糸を主体とする髄層があり、いちばん下に、上皮層より薄い下皮層があります。


 上は子器の断面です。 子器の内側(=写真の下方)に子のうができると思うのですが、よく分かりません。

(2015.12.9. 京都市 西芳寺川)



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