コマチゴケ Haplomitrium mnioides は、その姿が女性的で美しい苔類だとされています。 和名も小野小町に由来しています。 しかし造卵器がむき出しであることなど、進化的には原始的なグループだと考えられています。
コマチゴケでは、仮根は分化せず、地下茎状のものが絡まって群落を形成しています。 上はそれをほぐして撮ったものです。
葉は茎に3列につき、背面の1列の葉(背葉)は他の2列の葉(側葉)より小型である場合が多いようです(上の写真)。
葉は全縁で、脈はみられません。
葉の細胞は薄壁で、米粒形の油体がたくさん見られます |
コマチゴケは雌雄異株です。
上は2月25日撮影の雄株の造精器です。 造精器は茎に頂生し、花盤状で、3枚の葉が三角形に取り囲んでいます。
上は同じ日の雌株の様子です。 胞子体はカリプトラ( 造卵器に由来する、若い胞子体を保護する袋状の構造 )に包まれています。 下はその断面です。
以下、胞子体が発達する様子を、同じ場所(堺市南区豊田)で観察しました。
上は3月12日の撮影です。 カリプトラに包まれていますが、蒴と蒴柄が区別できます。 この時期の胞子体は全てほぼ同じように見え、この状態が長く続きました。
以下は全て4月12日の様子です。 胞子体は急に伸びるので、その外見には大きな差が生じます。
蒴がカリプトラから外に出はじめています |
長く伸びた胞子体 いちばん上と左下隅の蒴は胞子を出しています |
胞子を出している蒴 弾糸が出ています |
上の2枚は弾糸と胞子の顕微鏡写真です。 マキノゴケと異なり、らせん状の帯模様は、弾糸の端から端まで見られます。
◎ ここに載せた前の段階になる11月の様子をこちらに載せています。