2016-07-23

オオツボゴケ


 写真はオオツボゴケ Splachnum ampullaceum です。 北半球の寒冷地に分布しますが稀で、環境省RDBでは絶滅危惧Ⅰ類になっています。


 多くの蘚類の蒴は、細い蒴柄から、蒴柄の径が次第に大きくなったような頸部を経て、胞子を入れておく比較的大きな壺へと続きます。 ところがオオツボゴケでは頸部が壺よりもずっと大きく膨らみます。 上の写真の頸部はまだ若く黄緑色をしていますが、既に壺よりも大きく膨らんでいます。 この頸部が熟すと・・・


 熟した頸部は肩を張ったように大きくなり、色も赤紫に変化します。
 オオツボゴケの「オオツボ」は「大壺」でしょう。 しかし上に書いたようにオオツボゴケの壺は頸部よりも小さなものです。 和名は蒴全体を長頸壺に見立てたものでしょう。


 上の写真で、大きく膨れた頸部の上にある緑色の筒状の部分が壺です。 反り返っている褐色の蒴歯は、8本のように見えますが、じつは16本の蒴歯の2本ずつがピッタリとくっつきあっています。
 壺からは緑色の胞子が互いにくっつきあってドーナッツ状になってせり上がってきています。 このように胞子がバラバラにならずに粘着性があるのは、ハエなどの体にくっついて運んでもらうためです。
 オオツボゴケは動物の糞に生えるコケです。 ですからオオツボゴケも糞に似たにおいを出し、糞に集まるハエなどを呼び寄せ、胞子を糞に運んでもらおうとしているようです。


 上は蒴を真上に近い位置から撮ったものです。 この蒴では胞子がかなり減っています。 既にハエなどに運ばれたのでしょうか。


 上はオオツボゴケの植物体(=配偶体)です。 1枚目の写真で分かるように、オオツボゴケの植物体は胞子体に比較してとても小さなものです( 1枚目の写真の左下隅はミズゴケです )。 卵状披針形で鋭頭の葉の葉縁上部には、大きな歯がまばらに見られます。 中肋は葉先に達しています。

 写真のオオツボゴケは、北八ヶ岳の「麦草ヒュッテ」で 2016.7.20.に撮らせていただきました。 昨秋にヒュッテのオーナーが、見慣れないコケがあったので持ち帰って育ててみたところ、胞子体が出てきて名前が分かったということです。 帽のついた若い蒴の様子は麦草ヒュッテさんのFacebookに載せられています(こちら)。
 冬を室内で過ごしたので、野外で胞子体が見られるのはまだ先になるだろうということでした。

 北八ヶ岳ではコケはもちろん、種子植物や昆虫なども、たくさんの写真を撮ってきました。 このブログでは大阪“付近”で見られる生物を「そよ風のなかで」で、大阪付近とは異なった生物の様子は「そよ風に乗って」に載せています。 北八ヶ岳の亜高山帯の生物をどちらに載せようかと迷ったのですが、カナダで撮った写真もまだたくさん残っていますし、北八ヶ岳は無理をすれば日帰りもいちおう可能ですので、この「そよ風のなかで」で載せることにしました。 地元で撮った「そよ風のなかで」に載せたい写真もまだまだたくさん残っているのですが・・・。

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