2016-07-25

ヒカリゴケ


 岩の隙間の暗い空間を懐中電灯で照らすと、黄緑色に光る点が散らばって見えました。 ヒカリゴケです。
 上はフラッシュの光を当てて撮った写真のコントラストを少し強めています。 肉眼的には光る点が散らばっているようにしか見えなかったのですが、写真を確認すると、ヒカリゴケの植物体もたくさん写っていました。
 ヒカリゴケ Schistostega pennata は、その名のとおり光るコケとして知られていますが、上の写真のように、ヒカリゴケの植物体(=茎葉体=配偶体)は光っておらず、光っているものはその周囲に散らばっています。 じつはこの光っているものは、ヒカリゴケの原糸体のレンズ状細胞です。
 一般に、蘚類は胞子から発芽すると、一方向に細胞分裂を繰り返し、糸状に伸びていきます。 これを原糸体と呼んでいて、植物体はこの長く伸びた原糸体のあちこちにできる細胞の塊からできます。 多くの蘚類は植物体が育ちはじめると原糸体は消えていくのですが、ヒカリゴケの原糸体は残存性が高く、そこにレンズ状細胞と呼ばれる球形の細胞が混じります。 このレンズ状細胞が光を反射するので光って見えるわけです。


 上が顕微鏡下で撮ったレンズ状細胞です。 レンズ状細胞は光の当たる方向には光って見えますが、光は下から当てていて、上から見ていますから、光っているようには見えません。
 上の写真のようにレンズ状細胞は葉緑体を持っています。 ですからレンズ状細胞に白色光を当てても反射光には緑色が混じり、黄緑色に輝きます。


 上は植物体(=茎葉体=配偶体)です。 葉は左右2列に並んでいます。


 上は上下2枚の葉が接する所を撮った顕微鏡写真です。 下中央から右上隅に茎が走っています。 葉の基部は下延して下の葉と融合しています。 葉身細胞は長い菱形です。

 ヒカリゴケの分布は本州中部以北です。 1枚目の写真は 2016.7.20. に北八ヶ岳で撮影しました。

◎ ヒカリゴケの胞子体などについては、こちらには生育地での様子を、こちらには生殖器官をつけたものも含め、室内での観察結果を載せています。