私がウロコミズゴケだろうと思ったのは、下の枝葉です。
平凡社の図鑑には、「(ウロコミズゴケの)枝葉は広楕円形の基部から急に細く尖り、特徴的に先端が背方に反り返る。」とあり、横から見た枝葉の図も載せられています。 上の写真は背面から撮っていますので反り返りの様子は分かりませんが、広楕円形の基部から急に細く尖っているように見えます。 それにホソバミズゴケの枝葉は前に見ていて(こちら)、その時の葉の様子とは異なります。 しかし再度枝葉を観察してみると、両者の中間的な形のものもあり、連続しているようです。
上が生育場所(針葉樹の林床の水の沁み出す斜面)で撮った写真です。 K氏は下垂枝の長いことを指摘されています。 下垂枝が長いのはホソバミズゴケの特徴の1つで、私も下垂氏の長さは気になっていたのですが、ウロコミズゴケの下垂枝についての記載は平凡社の図鑑には無く、確かめられませんでした。
上は茎葉です。 ミズゴケの仲間の分類では、茎葉の形状、特に舷が重要なポイントになるとのことです。 K氏によれば上の写真の形状と舷の幅の上下の変化の様子にいちばん近いのはホソバミズゴケだということでした。
上の写真の茎葉は右側が欠けてしまっているので、撮り直したのが下の写真です。
舷は上部の縁では狭く基部で広がっていることや、葉頭から側方へ至る肩の部分が張っていることなど、ホソバミズゴケの茎葉の特徴がよく出ています。
以下、ホソバミズゴケの特徴を追加しておきます。
上は茎の表皮で、表皮細胞には0~1個の孔が見られます。 ウロコミズゴケの表皮にはこのような孔はありません。
上は開出枝の断面を作り、その一部を撮ったもので、たくさんの枝葉の断面が同心円状に並んでいます。 枝葉の断面は前掲のホソバミズゴケのところに載せていますので、今回はコンペンセータ(検板)に鋭敏色板(λ=530)を使った偏光顕微鏡で撮ってみました。 葉緑細胞の細胞壁が青く写っています。 葉緑細胞は腹面に開いていますが、これはホソバミズゴケに見られる特徴で、ウロコミズゴケの葉緑細胞は台形~樽型で、背腹両面に開き、背面により広く開いています。
上の写真のように枝葉背面中央の透明細胞の縁に楕円形~半月形の孔が連続して並んでいるのもホソバミズゴケの特徴の1つです。
(2017.6.13. 北八ヶ岳)
◎ ホソバミズゴケの枝葉や茎葉などについては、こちらにも載せています。
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