2017-12-26

チュウゴクネジクチゴケ


 岩上で放射状に広がったような姿のハイゴケ、造形的になかなか面白い姿だと思い近寄ったところ、ハイゴケの間に生えているコケが目につきました。 今後のハイゴケとの勢力争いも気になるところですが・・・


 ハイゴケの間に生えているのは上のようなコケでした。 少し持ち帰って調べてみると・・・



 茎は褐色、葉は針状披針形で、よく伸びた葉の長さは 1.5~2mmです。


 上は葉先近くの腹面を撮ったものです。 葉身細胞は丸みのある方形で、大きなパピラがあります。 奥に中肋がありますが、中肋の表皮細胞も同様です。

 このような葉は以前見たことがあるのですが、それ以上は思い出せず、蒴も無く、この段階で同定はギブアップ。 写真を送ってお聞きしたところ、センボンゴケ科フタゴゴケ属だろうとの回答をいただきましたので、平凡社の図鑑のフタゴゴケ属の検索表で調べることにしました。


 検索表のスタートは「茎の断面は三角形・・・/ 葉の断面は円く・・・」となっていますが、後者の「葉」は「茎」の誤植でしょう。
 「茎には中心柱がある」から「葉の基部は耳状にならない」「中肋腹面の表皮細胞は方形~卵形」「茎はほとんど分枝せず、葉腋には芽がない」「中肋は葉頂に達する」と進むと、次は「葉上部の葉縁は2細胞層 / 1細胞層」となりますので、葉の上部の断面作成です。


 葉縁は1細胞層で、葉が披針形ですので、検索表からはチュウゴクネジクチゴケ Didymodon vinealis に落ちました。


 チュウゴクネジクチゴケの種別の解説に書かれてある「葉縁は狭く反曲」などの特徴も、ほぼ一致します(上の写真)。 上の写真では斜めに切れた部分で葉の細胞が数層になっているようにも見えますが、中肋を除いて葉の細胞は1層です。 なお、本種は褐色で球形の無性芽をつけることもあるようです。

(2017.12.13. 京都市 貴船)

◎ 蒴のついているチュウゴクネジクチゴケはこちらに載せています。

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