上の写真と共に送っていただいたミズゴケ、チャミズゴケ Sphagnum fuscum だろうと思います。
育っていたのは北海道・千歳市の標高370mほどの所で、上の赤い円が本種です。 本種は密で大きな群落を作りますが、ふつうよく見られるのは高層湿原の最も高層化が進んだ小隆起状になった場所です。 上の写真の場所も、絶えず水の供給があり、盛り上がっていることで群落表面が空気によくさらされて乾燥ぎみとなり、上記と似た環境になっているのかもしれません。
サイズ的には中形のミズゴケで、写真ではうまく表現できませんが、他のミズゴケと比較して繊細な印象を受けます(上の写真のスケールの数字の単位は[mm]です)。 最初の写真を見ても、植物体は淡緑色~茶褐色です。
茎は上の写真では淡緑色~淡褐色ですが、下部に向かうにつれて黒褐色になっていきます(下に載せる茎の断面参照)。
上は開出枝と下垂枝です。 茎の上部の枝を見ると枝葉は5列に配列していますが、上のように長くなった開出枝でも、その傾向は残っています。 上の写真では、手前の3列を赤い線で示しました。 枝先では枝葉のつき方はまばらになってきています。
【枝葉】
枝葉の長さは 0.8~1.3mmです。 先端に2~4歯があります。
上は枝葉の背面上部です。 中形の孔が比較的多く見られます。
上は枝葉背面の中部です。 透明細胞は葉の基部(写真左下)に向かうにつれて長くなっています。 接合孔が散見されます。
上は枝葉腹面の上部で、下は中部です。
枝葉の腹面には孔は見られません。
上は枝葉の横断面です。 葉緑細胞は台形~三角形で、腹面に広く開いています。
【茎葉】
上は、基部が一部欠けてしまいましたが、茎葉です。 長い舌形で、長さは 0.8~1.0mmです。 舷は上部で狭く、下部で広がっています。
茎葉の先端部は円く、上端はわずかに裂けています。 上部の透明細胞は初め膜壁がありますが、古くなると貫通してきます。 同定は最初は平凡社の検索表で行おうとしたのですが、この検索表では「貫通する」としか書かれておらず、とまどいました。
【茎と枝】
上は茎の表面です。 表皮細胞に螺旋状肥厚は無く、孔もほとんどありません。
上は茎の横断面です。 表皮細胞は3~4層です。
上は枝葉を取り除いた開出枝です。 レトルト細胞の首はほとんどありません。
◎ チャミズゴケはこちらにも載せています。
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